女将の食卓blog

統一感はないですが・・・

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週末、夫がいろいろ作ってくれた残りモノが結構ある月曜日。リサイクルしてみました。写真左の奥の鉢は平茸がすごく安かったということで大量買ってきてオリーブオイル・塩・胡椒で炒めて食べました。この残りと切りコブをもう一度炒めなおして胡椒をきつめに、そして仕上げに柚子胡椒で味をひきしめました。作ってキッチンに置いておいたら子供がすごい量のつまみ食いをしてアッという間に半分に。ローカロリーだし安いし簡単だし♪

写真右はオムレツを作ったときの中身(挽肉・人参・玉葱の炒めたもの)があったのでそれとスライスチーズを冷凍のパイシートで包んで焼きました。パイシートはアップルパイでも焼こうかな~と思って買っておいたもの。実はミートパイを作った(作ったとはいえないほどですが)のは初めてでしたがとっても簡単。しかも作っていて楽しい!

写真左の手前は春菊とマグロのナムル風。これは残りものではありませんが。安いマグロがスーパーにあると醤油と酒でヅケにするか、ナムル風にごま油・塩・ゴマで和えるか、ということが多いです。それと写真はないけどイカスミのパスタ。これはイカ炒めの残りの応用。食卓にメニューの統一感はなかったけど栄養バランスはまあまあでしょうか。美味しかった!

旦那の居場所第33回 豚肩ロ-ス礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


噛み締めると、ジュワーと口中に広がる肉の旨味。肩ロースのうまさは筆舌に尽くし難い。スーパーで手軽に手に入るブロック肉は、もも、バラ、肩ロースの3種類。5年ほど前、赤坂の四川飯店で修行をしたという中国料理のプロに、叉焼肉(焼豚)の作り方を授かった。それ以来、この肩ロースとの出会いが肉料理の奥行きを果てしなく広げてくれた。

● ● ● ●肩ロースうまさの秘密● ● ● ●


豚肉を礼賛するのは「豚バラ」に続いて2回目。しかして、この「豚肩ロース」には「豚バラ」にはない魅力にあふれている。
渾然一体となった脂肪と肉の旨味、肉質は締まっているのに柔らかく歯切れが良い。肩ロースは豚の首から背中にかけての肩の部分の肉。普通のロースより赤味を帯びた筋肉の間には、細かい脂肪があり、霜降り状になっている。だから、適度な歯応えがあり、噛めばジュワーとジュシーでコクがある。焼豚、焼肉、ひき肉、煮込み料理、ソテーどんな料理にも対応できる。この肩ロースに続く背中の中央部分が、木目の細かく、周囲に適度な脂肪がついている、とんかつでお馴染みのロース。肩ロースはロースに比べるとずっと廉価。しかも、豚肉の旨味をダイレクトに堪能できるという点では、ロースやヘレにも勝る。まさに、豚肉好きにはたまらない最高の食材、うまいかな、「豚肩ロース」!

● ● ● ●これさえあればの肩ロース● ● ● ●


我が家の手作りとんかつは、肩ロース。固まりを買って好みの厚さにカットする。2cm程度をさっと筋切りをしてパン粉をつけて揚げる。硬過ぎず柔らか過ぎず、歯切れの良い最高のとんかつができる。紅茶で煮豚にしても良い。脂肪の比率がバラより少ないから冷めても脂肪が舌に残らない。かたまりを茹でて切り分ける。ビールにもワインにもあう絶品のオードブルになる。肩ロースはハムでもうまい。モモやロースもいけるが、味わい深さでは断然ショルダーだ。カレーでも是非お試しあれ。もものブロックを使うよりはるかにコクが出る。これさえあればの肩ロース、さあて、一丁、どうやって料理しちゃおうか。


■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、豚肩ロ-スあれこれ・・ ■■■
簡単で本格的な叉焼肉(焼豚)、本来はレンガ製の?爐(カオルウ)でつるしながら、じっくり炙るものだが、家庭のオーブンでもほぼ問題なく出来上がる。漬け込むタレには、紅乳腐を入れると格段の味になるのだが、常備できないのでコクの補強には舐麺醤や豆?を使う。試行錯誤の末、ほぼ狙い通りのレベルまで行き着いた「簡単叉焼肉」
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豚肩ロースのブロックを味がしみ込むようにフォークでつつき、タレに4~5時間漬け込む。260度程度のオーブンで約20分、時々タレを塗りながら焼き上げる。

タレ=醤油、砂糖、紹興酒、塩、胡椒、味の素、しょうがの皮、にんにく、ねぎの青いところ、以下はあればベター 山椒の実、豆鼓(ドウチ)、舐麺醤、八角(タレは舐めてみて甘すぎるかな?くらいの甘めでOK。あの独特の香りが苦手なら、山椒や八角は使わない。)
※紅乳腐=発酵させた塩漬けの豆腐
※豆?=大豆を発行させて作った、大徳寺納豆のような風味の中国調味料 刻んで使うが、最近ではペースト状の使いやすい瓶入りタイプ「豆?醤」もある。
※舐麺醤=小麦粉を原料とした甘い味噌、瓶入りのものが手軽、八丁味噌に砂糖、植物油で手作りしても可。

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肉がジュージュー焼ける時の音と匂いは最高のアペリティフ。事前に仕込んでおけば、調理時にキッチンに立つのは5分程度。来客をもてなしながら、豪華なメインディッシュが簡単に用意できる。「オリーブのソース、レモン、マスタード、ホースラディッシュ、辛子醤油・・好みの味付けでどうぞ」と勧める「肩ロースのオリーブ焼き」

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豚肩ロースのブロックに塩・胡椒をもみこみ、オリーブオイル、好みのハーブ、にんにく、刻んだオリーブ、少量の砂糖と一緒にビニール袋へ。4~5時間じっと寝かせる。フライパンで周囲をこんがりきつね色に焼いたら予熱済みのオーブンへ。
250度で15分程度、取り出したらアルミホイルに包んで、触れるくらいの温度になったら切り分ける。
よくあう「オリーブのソース」=バルサミコ酢を弱火でトロミが出るまで充分に加熱し刻んだオリーブを入れる。


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北海道 帯広駅の近くには、うまい豚丼の店がある。醤油ベースであっさりとしているが、肉の旨味を最高にひき出す味付けだ。横浜の中華街にも、豚丼のうまい店があって、学生時代によく通ったものだ。こちらは塩茹でのシンプルなもの。いずれしても、熱いご飯の上に、どばっと豚をかけて頬張るロジカルさは、何故か興奮を誘う。「豚肩ロースの大胆どんぶり」、興奮と感激の割には、手間のかからない料理だ。
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肩ロースは厚さ1cm程度にスライスし、ウイスキー、塩、胡椒を揉み込んで、最後にさっと片栗粉をまぶす。フライパンに少量の油を引いて肉を両面こんがりやく。この際、クリスピーカバーを使えば表面はカリカリ、中はジューシーに焼き上がる。
最後にさっとタレをかけて表面に煎りつける。熱いご飯にのせるも良し、ビールのつまみにするも良し。

タレ=醤油、みりん、日本酒、しょうが
 


旦那の居場所、今回は「豚肩ロース」のおいしさについてでした。 豚肉は必須アミノ酸をバランス良く含む、高タンパク食品。ビタミンB1も多い。 脂肪は多いが、リノール酸など不飽和脂肪酸の割合も多く、意外と コレステロール値は高くはない。にんにく、ねぎ、にら等ビタミンやミネラルたっぷりの、甘味のある野菜との相性も良いからいろいろな料理方法でたっぷり食べたい。 余分な脂を落とすには直火で焼くのが一番だが、家庭では難しい。 オーブンや圧力鍋を駆使して、自慢料理を生み出す工夫がまた楽しい。少量の砂糖やウイスキーは最良の隠し味。とにかく、中国風、和風、イタリアン、どんな味付けにしても、この上なく美味い。その上、、ビールにワインにご飯にパンにと、何にでもあってしまうというから、ホント「豚肩ロース」の魅力とは不思議なものです。
(01年10月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第32回 トマト礼賛 

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


小学生の時分、トマトは夏のおやつだった。箱ごと買い冷蔵庫に補充。 喉もからから、遊びから帰ってきて、冷えたトマトを丸かじりする時のうまさ! 大人になってからの「ビールの最初の一杯」にも勝る至福の癒し。 かぶりつけば、じゅわっと果汁がほとばしり、まだ泥で汚れた手と顔が濡れる。 トマトの青臭さと手指の泥くささ、夕立のほこり臭さ、懐かしくも遠い、子供の頃の夏休みの臭いだ。

● ● ● ● いろいろなトマトたち ● ● ● ●

はじめてミニトマトを見た時の感動は忘れられない。かつては機内食用に作られていたものだったとか。 とにかく、可愛くて、とても高くて、ちゃんとトマトの味がする小さな野菜。 そんな可憐なミニトマトに出会ってから、かれこれ20年くらいになるのではないか。 「完熟」という言葉はいつ頃から使われ始めたのだろう。 「完熟トマト」なるものを初めて食べた時のあの甘さの感動は忘れられない。 「え? ということは今まで食べていたのは熟していないトマトだったの?」となにやら不思議に思ったもの。 品種の進歩か、輸送の進歩か、株上で完熟したトマトも毎日買える値段で手に入るようになったのはありがたい。

「冷やしトマト」は最高の夏のつまみ。不思議と居酒屋では「くし切り」でマヨネーズ。 これがビストロやトラットリアでは「スライス」でドレッシングになる。 家庭では「トマトの輪切り」に何をかけるか。醤油と塩、醤油と砂糖、何故か塩派と砂糖派に分かれるようだ。 塩はトマトの風味と酸味を強調し、砂糖は甘さを増やしてマイルドな味になるようだ。

イタリア語では「ポモドーロ」。直訳では「黄金の果実」。トマトはイタリア料理には欠かせない。 少し先の尖った細長い真っ赤な奴で、「サンマルツァーノ」「ローマ」種が代表格。 パスタ、ピザ、煮込み料理、とにかくオリーブオイルやニンニク、バジルとの相性は抜群だ。 トマトのうま味がイタリア料理の隠し味であることに間違いはない。

● ● ● ● トマトうまさの秘密 ● ● ● ●

トマトのうまさは、何と言っても、あの酸味と甘みの好対照だ。酸味の主成分はクエン酸。 かぶりつけば、皮が裂けると同時にゼリー部がじゅわっと飛び出し、種のつぶつぶが舌に残る。 酸味や甘みに劣らずうま味も強い。果肉が緻密で締まったものほどおいしい。 トマト臭さや皮の硬さは好みによるだろう。

料理のプロがトマトを使う時は、皮を湯むきし、種を取ることが多い。 何故そんな手間をかけるのかが不思議な方は、一度お試しあれ。 皮を剥いたトマトは舌に優しく口に清々しいし、種を取り除いたトマトには苦みが残らない。 取り除いた種だけを食べてみると、種が如何に苦いものかよくわかる。 特に、缶詰のホールトマトなどは種を取りたい。トマトソースなど作れば、この手間の差は 味に如実に現れる。 夏の間はうまいトマトを、とにかくたくさん食べたい。きりりと冷えた夏野菜の王様、ああ本当にうまいかな、トマト!

■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、トマトアレコレ・・ ■■■
この季節、「冷たいトマトのパスタ」が最高だ。5歳の娘はこのパスタが大好きで、 どこのイタリアンで食べるパスタよりも、パパの冷たい赤いパスタがおいしい!と言ってくれる。 2種類以上のトマトを使うのがコツ。ソースは予め作り冷やしておけるので、夏のパーティーにはうってつけ。

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オリーブオイルで、玉葱のみじんぎりを炒め、種を取り除いた缶詰のトマトを注ぐ。 月桂樹の葉を入れてしばらく煮込む。この基本のトマトソースは万能選手。 この基本のソースに、炒めたにんじんのみじん切り、茄子、しめじか椎茸、セロリを入れて 塩で味付け、ソースは完成、ステンのボールに入れて良く冷やす。 別にフレッシュのトマトをざく切りにし、ボールに入れて、塩、オリーブオイルを振りかけ良く冷やす。 細めのロングパスタ(1.5~1.7㎜程度)を少し柔らか目に茹でて冷水に取り、水切りの後、 オリーブオイルと「アジシオ」で和える。これに良く冷えたトマトソースとトマトのざく切り、ちぎったバジルをかけて出来上がり。 2種類のトマト、パスタそれぞれに塩味をつけるため、しょっぱくなり過ぎないように注意。 冷たいパスタは後から塩味の追加が可能だから、最後に味を見てから仕上げを。


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思いっきり甘いフルーツトマトはシンプルに食べたい。モッツアレラのスライスと合わせても良い。 しかし、この料理、シンプルだからこそ、モッツアレラの質と状態に左右されてしまう。 特に甘い完熟のフルーツトマトなら、むしろ、絹ごし豆腐との相性が良いだろう。

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トマト、豆腐、ドレッシングはそれぞれ良く冷やしておく。 フルーツトマトは良く切れるナイフでスライス、絹ごし豆腐も、同じ大きさ、厚さにスライス。 冷たいドレッシングをまわしかけ、バジルの香りを楽しみながら召し上がれ。 ドレッシングは、玉葱の粗みじんをサッとオリーブオイルで炒め、醤油、酢、砂糖で調味したもがよく合う。


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贅沢で夏向きのあっさりしたラーメンは如何? トマトの酸味が食欲をそそる「夏のミニトマト湯麺」

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夏だからラーメンスープは自分で作らず市販の「スープ付きのチルドの生麺」を活用したい。 ご存知、生麺の大手「シマダヤ」の東京風の細麺縮れタイプや高井戸の池田製麺の「東京雷麺」が旦那のお気に入り。 夏のラーメン、具はシンプルに。メンマ、のり、オクラ、薬味はネギではなく茗荷といきたい。 そしてミニトマト。手間はかかるが湯むき(皮に切れ目を入れて熱湯で1分、皮がするっと剥ける。)して、ハーフカット。 ボールの中で、しょうがのみじん切り、ごま油、「アジシオ」と和えて1時間置く。 熱々のラーメンに、具をトッピング、最後にトマトをタップリと入れる。醤油の香りとスープの塩気にトマトが絶妙な酸味と甘みを加えてくれる。



旦那の居場所、今回は「トマト」のおいしさについてでした。 フレッシュで食べる以外にも様々な形で食卓に上り、知らずして口にしているトマト。 固形のドライトマト、粉末の乾燥トマト、ホールやダイスカットの水煮缶詰、ピューレ、ペースト、ケチャップ、ジュースと加工方法も多岐に及ぶ。 日本で普及したのは明治から大正にかけて。あの色、あの酸味と苦み、ナス科とはいえ当時としてはかなり前衛的な食べ物だったに違いない。

トマトはペルー、エクアドルが原産、メキシコを経て、北アメリカ、ヨーロッパに伝わった。このアンデス文明の贈り物が、今では世界各国の食文化を支えている。 赤色の正体はリコピン、橙色はカロチン。ビタミンA、Cも豊富とくれば、夏にはぴったりの野菜。 蝉の声を聞きながら、流水で冷やしたトマトに、茹でたての枝豆で、ビールの栓を抜けば蒸し暑さなどどこ吹く風?というからホント「トマト」の魅力とは不思議なものです。

(01年6月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第30回 蕗礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています

春の野山で、土筆(つくし)や野芹を採った思い出。 「君がため 春の野に出て若菜摘む・・」の歌が頭をよぎる季節。 冴え冴えとした日差しの中、ピンと張りつめたまだ寒い空気の中で、 生まれたばかりの若い力がそっと土の中から顔を出す。 「ふきのとう」という響きにも、日本の春を想わせる独特の語感がある。

● ● ● ●春の山菜の魅力 ● ● ● ●


我が家では、春の香り達を楽しむための山菜てんぷらパーティーがこの季節の人気。 下ごしらえの段から、鼻孔は山菜達に支配され、揚げたてを口に放り込めば、鼻から口から、春の香りを満喫できる。 春の山菜達、それは、冬の間に蓄えていた力を一気に爆発させる若い喘ぎのようだ。 運動もせずに、冬眠モードに入っていた怠惰な身体を、春の香りで呼び覚ましてくれる。 皮下に脂肪を蓄えて、節約モードで貯め込んでいた体内の老廃物を春の苦みで追い出してくれる。 そんな力を持った春の山菜、毎年、刻み続ける大切な味覚と嗅覚の記憶だ。

● ● ● ●蕗うまさの秘密 ● ● ● ●

香りと苦みは言うまでもない。蕗のうまさはそれに加えて、食感と彩りだ。 澄み切っているのに、渋みのある、薄緑色。目にも優しい、なんとも日本的な色彩だ。 「筋の通った」茎を噛みしめる時の絶妙なテクスチャー。一本一本の繊維の管から香りと苦みが舌に押し寄せる。 水蕗は先に茹でて皮を剥く。縦にツーと剥くのが面白く、4歳の娘は必ず手伝ってくれる。

皮を剥きながら、時々の手指を鼻に近づけては「くちゃーい」と顔をしかめる。 剥いた半分は、青くきれいなまま、薄味をつける。酒、みりんに塩を加えて煮立てものに、つけておく。 残りの半分は、酒、みりん、濃口醤油、さとうで辛煮にする。 薄煮は漬け物やサラダのような感覚でむしゃむしゃと、たっぷり食べる。 辛煮はお茶請け日本酒のつまみ、ごはんの友にぴったりだ。
「蕗の薹(ふきのとう)」も忘れてはいけない。これは、蕗の花茎で、香りとほろ苦さにおいて 春の訪れを感じさせる抜群の素材だ。

■■■ 家庭でもほんとにおいしい、蕗料理アレコレ・ ■■■
実は蕗は砂糖との相性も抜群。砂糖漬けもおいしい。 「蕗餅」は子供も楽しく食べられる料理。 ホットプレートがあれば、食卓で作るも良し。

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蕗の薄煮は水分を切ってグラニュー糖をまぶす。 白玉粉を水でゆるめに溶く。 熱したフライパンに薄く油をしき、蕗をいかだに並べ、溶いた白玉粉でとじる様に焼く。 おやつなら、蕗の他に、具に、柚子味噌やつぶあんなどを使っても面白い。


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蕗の葉がまたうまい。辛煮にしてごはんにかけて食べるのは最高。 ごま油との相性が良いから、ナムルにしてもまたうまい! 「蕗の葉のナムル」


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蕗の葉は塩水で茹でて水気を切り、水に浸しておく。 えぐ味を確かめながら2~3度水をかえ、あくを抜く。 水気を良く絞り、おろしにんにく、擂りごま、ごま油、塩、砂糖を入れて、よく和える。 手でよく揉み込むようにかき混ぜる。すっかり馴染んで、渾然一体、乳化したのか?と思うくらいまで、かき混ぜる。


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蕗に負けず劣らず蕗の薹のおいしさも堪らない。 てんぷらにしてもこたえられないうまさだが、蕗の薹味噌にしてもいいし、 甘酢に漬けてもおいしい。本当に香りを楽しみたいなら、薄味の「ころがし煮」がいい。

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蕗の薹を1/2に切り、塩を入れた熱湯で5~10分湯がく。 たっぷりのお湯で一気に熱を通す。加熱ムラがあると、色が黒くなる。 あくが強い場合は、米のとぎ汁を使っても良い。 煮上がったらざるにとり、水に放しておく。何度か水をかえてあくを抜く。 (てんぷら以外の場合は、ここまでが共通の下拵え) 水気を切った蕗の薹をさっと油で炒め、みりん、さとう、薄口醤油でころがし煮にする。 薄味で、本来の香りと味を楽しみたい。

下越しらえした蕗の薹は油で炒めてから、白和えや甘酢漬けにしてもうまいし、刻んで蕗の薹味噌にしても良い。 味噌には少量の練りごまやピーナッツバターを入れるとおいしい。蕗の薹は、油、酢、味噌、砂糖、ごまやくるみ、ピーナッツ等との相性が良いようだ。


旦那の居場所、今回は「蕗(ふき)」のおいしさについてでした。 蕗は数少ない、日本原産の野菜。水分ばかりで栄養はなさそうですが、こう見えても、実はカロチンが豊富な優良な素材。 それより何より、あのほろ苦さが、身体に活を入れてくれる様な気がします。

摘んできた蕗を薄煮、辛煮にして、どっさりと盛り鉢に山高に盛って、日に日に和らいでくる空気の中で、縁側でちびちび酒を呑みながらつまむ。 他には何もなくても、きっと「日本に生まれて良かった~」なんて思うんだろうなあ。そんな暮らしまで夢見てしまうというから、ホント「蕗」の魅力とは不思議なものです。
(2001年4月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第29回 冬の鍋礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています

鍋にまつわる思い出は枚挙に暇がない。学生時代、柔道部の合宿所で、他部の友人を 招いて行う鍋大会。時に相撲部に伝わる特製ちゃんこ等、客人から教えられた味も多い。 蓋を開けると立ち上る湯気。冬の鍋には日本人に生まれて良かった。と唸らせる滋味がある。

● ● ● ●冬の鍋うまさの秘密 ● ● ● ●

寒さと共に素材が本当にうまくなる時期、気の合う仲間と鍋を囲めば、いつしか「おしくらまんじゅう」をしている 様なしみじとした連帯感が広がる。 梅が香り、桜がほころぶ季節になっても、しんしんと堪える花冷えの夜には、これまた鍋が良く似合う。 新しい季節の訪れを感じさせる、命の息吹を鍋にたっぷり放り込めば、眠っていた身体が目覚めるほどの 香りとほろ苦みを楽しめる。 初対面でも「それでは自家箸で。」なんて一言断れば、もう気分は親戚同然だし。

家族団らんを絵に撮れば、もう鍋を囲む姿しか想像できない。 「すきやき」「しゃぶしゃぶ」でなく、「ちゃんこ鍋」や「ねぎま鍋」などつつく男女を見たら、 差しつ差されつ、それはもう「疑わしきこと、羨ましきこと、甚だしい」雰囲気となる。 全国津々浦々、数多ある鍋の中で、記憶に残る鍋のうまさ。それは必ず、一緒につついた誰かの 笑顔と重なる忘れられない、懐かしい懐かしい舌の思い出だ。

● ● ● ●冬が嬉しい、春が待ち遠しい、うまい鍋たち ● ● ● ●

6年振りに東京で過ごす冬。人形町のねぎま鍋、よし田のかも鍋、新三浦の水炊き ちゃんこ川崎のちゃんこ鍋、神田のあんこう鍋・・。財布と相談すれば、とても一冬では回りきれない。 その上全国各地でうまい鍋が僕を呼んでいる。ふぐ、かき、アラ、ぶり、鮭、カニ、鯨、・・はてさて、どうしたものか。 人生先は長いから、今年はいけるところまでで、まあ良いか。 初春の素材もまた楽しみだ。菜の花、ふきのとう、蕗、せり、みつば。変哲もない寄せ鍋を彩る春の香り達。 さっと火を通す度に鼻孔から春を感じる幸せ。美しい日本の季節に、彩りを添えてくれる、うまい、うまい鍋たち。

■■■ 家庭でもほんとにおいしい、鍋料理アレコレ ■■■

中学の修学旅行で京都に行った。泊まったホテル「大富」で食べた鍋のうまさは今でも舌に焼き付いている。 あまりのうまさに仲居さんに尋ねると、「へえ、大富鍋いいますねん。」「ピーナッツをあたってだしに入れるんどす。」と来たから驚き。 何度か嗜好錯誤して行き着いたあの時の感動。ピーナッツバターを使って再現した「京都で出会ったピーナッツ鍋」 ピーナッツバターは「スキッピー」に限る。「クリーミータイプ」ならそのまま。 「チャンクタイプ」なら味噌漉しで固形のピーナッツを除いて溶かし混む。 騙されたと思ってお試しを。よくある、甘いタイプのピーナッツバターは使わないで下さい。 また、独特の風味が野菜の滋味を消すので、ごまペーストでは代用できません。


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だしは、水だしのこんぶだしに「ほんだし」「瀬戸のほんじお」濃口・薄口醤油で味付け。 冬の野菜の滋味を活かす為、白菜の芯、ねぎの青いところ等を入れてくたくた煮る。 骨付きの鶏肉等や干し椎茸は予め入れてうま味を引き出す。 だし野菜を捨て、改めて白菜の固いところを入れて透き通るまで煮る。 だしにピーナッツバターを溶かし込んだら味が一変。なんといも言えない味になる。 その他の具は、豆腐、京菜を必須にして、どんなものでもよく合う。 餅や生麩は最高。最後はうどんを入れても絶品。


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シンプルな具、シンプルなだしの組み合わせが、絶叫する程うまい鍋になる。 そんな鍋が一家に一つはあるだろう。豚肉のスライスとほうれん草だけをポン酢で食べる「常夜鍋」もその一つ。 鶏とタコのつくね団子をうどんのだしで食べるシンプル鍋も絶品だ。「鶏タコ鍋」のうまさにいつも脱帽。


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だしは、「ほんだし」、「瀬戸のほんじお」、みりん、薄口醤油。 関西風のうどんだしを作って欲しい。(味の素kkの関西風うどんおでんだし「どんでん」ならその他の調味料は不要) 鶏肉のミンチに、細かく刻んだタコと紅生姜を入れ、少量のしょうが汁、たっぷりの水で混ぜる。 スプーンで丸めて次々と鍋の中へ。煮えるのが待ちきれない程のうまさだから、喧嘩にならないようご用心。 薬味代わりにせりやみつばをたっぷり入れたら、また最高。最後の雑炊が、これまた最高。


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牡蠣、ベーコン、豚バラ、生鮭、キャベツ、これを楽しむにこんな鍋は如何。 こってりそうだが、こってりではない。身体に優しい、優しいお鍋。 「牛乳チーズ鍋」

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「コンソメ」などで味付けしただしで、キャベツを煮る。 牛乳をだしの1/3程度入れて鍋大会開始。ベーコン、豚バラ、牡蠣等々。 バッチ毎に溶けるチーズをふりかけて。 最後は生米を入れて目の前でリゾットが楽しい。



旦那の居場所、今回は「冬の鍋」のおいしさについてでした。 だしのうま味を存分に吸った白菜や生麩。口に入れるとぴゅっと飛び出す熱々のねぎの汁。湯気と共に飛び込む春菊の香り。歯応えを残して楽しむキノコ達。 鍋の良さは、自分の好きな素材を自分の好きな加熱加減で食べられること。 出来上がりを考えて投入する順番を決め、好みの薬味で食べる。だから不思議と一鍋に一人、鍋奉行が誕生する。

今日は鍋!と決めた時から、鍋に味をつけるか、水炊きにして手元のゆずポン酢で食べるか、迷いに迷う。もちろん、鍋の種類でお酒の種類や飲み方も変わるから、どんな酒で楽しもうか、またまた、迷いに迷う。 最後にだしに投入するのは、ご飯か麺か、これまた、迷いに迷う。 鍋の翌朝、土鍋に残り汁等あろうものなら、朝からまた一献しながら、一鍋始めてしまうというから、 ホント「冬の鍋」の魅力とは不思議なものです。
(2001年3月 copywright hiroharu motohashi)

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