女将の食卓blog

野菜ずき

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我が家は家族全員野菜大好き。子供も人参・セロリ・春菊・ピーマン・ゴーヤ・・・と子供が嫌いといわれる野菜も平気です。長女のお弁当を見るお友達からは「よくそんな野菜食べれるね!」と言われるそうです。ワタシは子供が小さいときから「これは子供には匂いがきつい野菜だな、甘くしておあげようかな、小さくきざんであげようかな、何かと混ぜてあげようかな」という配慮?を全くせずにポンポン普通に食卓に並べていたのがよかったのかもしれません。
今夜はあんまり野菜は多くありませんが、ホウレン草を茹でたものにカニカマをさいてトッピング、かつおぶしと市販の和風ドレッシングをかけて和えたもの、胡瓜とセロリの糠漬け、長芋を短冊にして白だしとぽん酢で漬けたもの。これにサバの竜田揚げでした。セロリの糠漬けは美味しい!我が家はマンションなので糠漬けはいつも冷蔵庫。つい、かきまわすのを忘れることもあるし面倒だと思うこともあるけど、やはり食べたい味です。

旦那の居場所第11回 「旅にしあれば旅の味」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


有田・唐津編 女将の仕入れに同道する半年振りの九州への旅、旦那の目的は「うまいもの」。 3月の3連休は、土、日、月。既に、いつの昼はどこで、この日の夜はここで、と当たりはつけてある。 もちろん、「定休日」なんてことのない様、事前確認済み。 行き当たりばったり、嗅覚だけで「うまいもの」を探すのも旅の楽しさだが、 ここにいったらこの店に必ず行く、というのも、またいいものだと思う。
 

上海飯店の厨房 最初の出会いは1年前。風邪気味で食欲のない娘、咲良に中華ならと思って飛び込んだ店だ。 この時、咲良は食欲不振を返上、皿うどんと中華丼を馬鹿食いして、一気に回復した。


有田の国道沿いにあるこの店は、いつ訪れても、地元のお客さんでいっぱいだ。 チャンポン、皿ウドン、炒飯。ベーシックメニューがとにかくうまい。安い。そして 量がある。1人前を2人で食べるお客さんもかなりいる。お店も心得ていて、 料理の数だけ、人数分の取り皿を出してくれる。 客席はほとんどが、畳にこたつ。なんとも、家庭的な雰囲気だ。 うまさの秘密は、あっさりとした味付け。そして、具がたくさん。野菜の食感がまた絶妙。


ここの厨房は物凄い。なにしろ、一人前の量が多いから、特大の北京鍋でガンガン作る。 どのメニューにもたっぷり入る野菜は、一口大で山の様に積まれている。 「中華丼のご飯を!」「二番にスープとサラダ!」鍋を振りながらも、旦那さんの指示が飛ぶ。 今回は、焼き餃子に、2人前ずつもあろうかという特製チャンポン、特製皿ウドンをペロリ。おにぎり3つ(咲良の分も)を つけてくれた。腹十二分目まで食べるが、何故かモタレナイ。

 

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ここは、昨年仕入れの時に、窯元さんから教えて頂いた。龍門ダムの湖畔、最も奥にある川魚料理の老舗。 大正10年開業、当代で3代目、脈々と受け継がれた素朴で本物の味が楽しめる。 今回、初日の夕食は「龍水亭」と定め、数日前から予約をしてある。 店の入り口付近に湧く「龍門の岩清水」で口を清めると、もうヨダレが出てきてしまうパブロフの犬状態。 とにかく、鯉がうまい。「鯉とはこんなにも、うまいものだったのか!」まさに初鯉の味である。

鯉を龍門の名水で泳がせ、味が充実し、臭みが抜けたところを見計らって、調理をするからだろうか。 洗いにすれば、テキメンに、この鯉のうまさがわかる。臭みがまったく無く、かりりんと身が締まり、それでいて、しっとりした舌触り。 これをじっくり醸造した自家製の味噌で作った、とびきりうまい酢味噌で食うから、これはもう 気絶しそうになる味わいだ。

次にこれまた、自家製の柚子こしょうを酢味噌にちらっと混ぜると、 今度は一層、鯉の鮮烈さが浮き立つ。 洗いに向く海の魚も多いが、しつこすぎず飽きない分だけ、鯉は、一段と格調が高い。 洗いもうまいが、鯉こく、鯉の唐揚げに柚子あんをかけたもの(=これはおすすめ)、鯉のうまさを 思い知る。

これに、やまめの塩焼き、うなぎの蒲焼きがついたコースで、5000円弱だというので また「びっくり」である。

 


嬉野の隠れ宿 今回、初日の宿は、嬉野の観光ビジネスホテル別館山水。 「龍水亭」でゆっくり夕食を摂ってからチェックイン。 このビジネスホテル、築も経ており、過分の設備、サービスはない。 が、しかし、隣接する名旅館「山水」の大岩風呂が無料で使える。 嬉野の湯は、お肌しっとりの美人湯だ。 ツイン9200円に朝食一人1000円の格安、明朗会計なり。 朝食も、温泉玉子や湯豆腐、焼き魚にサラダ、明太子までついて1000円とは。

 

有田の紀文鮨 新婚旅行で初めて暖簾をくぐった思い出の店。とにかく、アオリイカのうまさにびっくり仰天した。 九州産の、くどくない、小ぶりで甘く、キメの細かいウニにも舌鼓みを打った。 ネタの大きさもシャリの握り加減も絶妙のイナセな江戸前風。粋な握りが楽しめる。 しかも、握りやつまみは、染め付け、青磁、白磁、赤絵・・の名品で供される。 今回も2日目の昼に立ち寄った。旦那さんの変わらぬ笑顔にホットする。 女将は午前中、意中の窯元と商談成立で上機嫌。 器の町・有田では、遠来の商談客をもてなすニーズか、寿司屋の激戦区。レベルが高い。

 

唐津に洋々閣あり 2度目の洋々閣。最初は新婚旅行。あの時は改装中で休館だったが、どうしてもと 泊めて頂いた。泊り客は、当方一組だけだった。 今回は、全室満室。人気の高さが窺い知れる。 さて、ここは、名物「ざる豆腐」で知れた、料理が自慢の唐津の老舗。中里隆氏の器で供されることでも名高い。 お味は、一皿一皿に細心の仕事が施してあって感心する。湯布院あたりの宿で受けている、 素材感のある、野趣に富んだ料理とは対局にある料理。堅苦しさもあるが、変わらぬ伝統の重みを感じてしまう。

味付けは全般的に、昆布のうま味が強く、かつおの風味などは敢えて抑えて素材の風味を慈しむ。 満足度の高さでは朝食だ。ざる豆腐、ちりめん山椒、昆布の佃煮、卯の花、鯖の塩焼き・・。 これで、麦粥を何度もお替わりする。 最後に香の物と煎茶で締めくくる。九州のお茶はどこで飲んでも本当にうまいが、隆太窯の湯呑みで 頂く「洋々閣」の朝のお茶はまた格別である。

 

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旦那の居場所、今回は「旅にしあれば旅の味」有田・唐津のおいしさについてでした。 何故、旅先で食べる物はこんなにおいしいのでしょうか? 旅にはずむ心も一因ですが、水、空気、温度、湿度。その土地の食べ物は その土地の風土に根差しているからではないでしょうか? そして、やはり、地元で取れる素材への、地元の人々の愛着と慈しみ。 鮮度や食べ方の工夫に感心する前に、愛情を感じる訳であります。 広島から片道4時間の道のりでも、すぐにまた行きたくなるというから、 本当に有田・唐津の魅力とは、不思議なものです。 (99年3月 copywright hiroharu motohashi)

■ 有田 中華料理 上海飯店 0955-42-3901

■ 竜門峡 川魚料理 龍水亭 0955-46-2155

■ 嬉野 観光ビジネスホテル 別館山水 0954-42-1150

■ 有田 紀文鮨 0955-42-2535

■ 唐津 洋々閣 0955-72-7181

旦那の居場所第27回 蕎麦礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


「私は無類の蕎麦好き!」と思っている御仁は多い。旦那もその一人。 岡山、広島在住時代も、うどん文化の中で、うまい蕎麦探しに没頭した。 たまさかの東京出張では、まっすぐに蕎麦屋に直行したものだ。 朝一番の飛行機で移動して、「よし田」に暖簾がかかるまで、銀座をうろつくなんてことも多かった。 蕎麦切りを自分で打つのには何度も挑戦した。プロの指導も受けたし、 諸説を分析しながらうまい蕎麦の打ち方を解析したりもした。

しかし、本当にうまい蕎麦を食いたければ、うまい蕎麦屋に行って食べる、ことだという結論に行き着いた。 うまい蕎麦との最初の出会いは、「深大寺蕎麦」だったかもしれない。 子供の頃、家族と多摩にお墓参りに行く度に、深大寺へ寄っては鱈腹食べた。 業務用の営業時代は、蕎麦屋さんにもお伺いした。


厨房に入り、だしを引く寸胴を覗きながら、だし取りの工程を確認する。 まさに百店百様のやり方があるわけで、朝早くからの重労働。 どんなに材料を吟味し、手間を惜しまず、腕を磨いても、一杯の蕎麦の値段は高いところでもせいぜい2千円止まり。 そう考えると「蕎麦切り」作りにかかる付加価値、技術料はもっと高く評価されても良いかも知れない。 これからの心配は、ますます蕎麦屋さんが街から姿を消していくということ。


● ● ● ●蕎麦切りうまさの秘密 ● ● ● ●


蕎麦切りのうまさは、なんといっても、あの香気と喉ごしだ。 ぷーんと攻め来る独特の香り。腹が減ってなくても、条件反射で胃袋が隙間を作る、なんとも形容しがたい香りだ。 蕎麦の産地や季節、蕎麦粉の鮮度や細かさ、殻の入り具合や挽き方、つなぎの種類や比率等香りを決める要素は多い。 もちろん、つゆの持つ香りとの相性やコントラストも重要だ。 そして、喉ごし。うどんが噛んだときのテクスチャーを楽しむ料理なら、蕎麦切りは噛まずに呑み込んだ時の 喉ごしを愛でる料理だ。麺の番手・長さ、蕎麦粉の粗さ、茹で加減に締め加減、表面の温度や乾き具合によって決まる部分だ。


しかし、何より楽しいのは、食べ方のバラエティ。かけつゆにいろいろなトッピングを入れて良し。 シンプルな「もり」も薬味のバリエーションで、同じ蕎麦かな、と思うくらいの変化を楽しめる。 蕎麦の中に季節の香りや旬の素材を打ち込む変わり蕎麦など、変化を楽しむ食べ方の筆頭だ。 これからの季節は鴨だなあ。冷たい蕎麦を鴨と焼きネギのたっぷり入った温かいつゆにつけて食べる「鴨せいろ」。 こんなうまい組合せを考えた日本人の智慧に感謝、感謝。旦那の実家の年越蕎麦、近年では「てんぷら」より「鴨せいろ」に 人気が移っているようです。


● ● ● ●うまい蕎麦屋は? ● ● ● ●

うまい蕎麦屋、良い蕎麦屋とは,どんな蕎麦屋か?材料へのこだわり、腕の良さ、産地との距離、水の良さ、酒が飲める店等々。 しかし、本当にうまい蕎麦屋とは、人それぞれの記憶に残る店のことだと思う。 そこで交わされた会話、楽しかった時間が、蕎麦の香りとだしのにおいと共に、脳細胞に刻まれていく・・・。 旦那の家の近所の「満寿美屋」は、無名の何の変哲もない蕎麦屋だが、子供の頃、母親の仕事が忙しい時に、 よく出前で食べた店だ。蕎麦屋といえば、そこしか知らなかった時代が長い。今食べても、何故か懐かしく本当にうまいと思う。

学生時代に、当時柔道部の監督だった橋本先輩に連れて行って頂いた銀座「よし田」も好きな店の1つ。 鴨鍋のあまりのうまさに絶叫し、いったい何人前の鍋を平らげ、何本のお銚子を呑み、何枚の盛り蕎麦を食ったのかも覚えていない。 神田の「まつや」に行くと、先代の店主 小高先輩を思い出す。大学の柔道部の先輩で、温厚だが筋の通った先輩で 寄付を頂きに伺うとてんぷら蕎麦を振る舞ってくれるというので、部員には人気の先輩だった。 初めて出された「蕎麦湯」の飲み方がわからず、湯呑みに入れて飲んだ後輩もいた。

昼飯を食う時間もない程忙しい時代に助けられたのは立ち食いの「小諸そば」だった。 気がつけば一日3食すべて「小諸そば」で食事をしていた日もあった。蕎麦?にかじりついて、頑張った時代を今でも思い出す。


● ● ● ●自宅で食べるうまい蕎麦 ● ● ● ●

我が家では「そばの里」さんから取り寄せる乾麺が定番。腰の加減と長さが嬉しい。 生蕎麦を買うこともあるが、余程計画的に買い回らない限り、うまい蕎麦には巡り会えない。 保存の為のアルコール臭を嗅ぎながら蕎麦を茹でる羽目になる。 この点、乾麺は湿度等保存状態を心がければ、ほぼ一年中、同じ品質。我が家では100%「もり」蕎麦で「かけ」はやらない。 自宅で食べる蕎麦切りの楽しさは薬味にある。新潟あたりの辛み大根が手に入れば、蕎麦を茹でない法はない。 大根の絞り汁に蕎麦をつければ、もう極楽。「七味だけ」というのも乙なモノ。 ごまやクルミの変わり汁に挑戦するのも楽しいし、柚子や茗荷等、季節を感じるのも、いとをかし。

■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、蕎麦料理アレコレ・・ ■■■
蕎麦はビタミンPの宝庫。ルチンという微量栄養素に富む。 これは、血管の詰まりを防ぎ血圧を下げる働きもある。 しかし、ビタミンPは水溶性のビタミン。細い蕎麦切りにして、お湯で茹でれば、 この栄養素は大部分蕎麦湯の中に溶出する。それなら、蕎麦粉で食べるに限る。 蕎麦切りより、蕎麦がきの歴史の方が断然古い。やり始めると病みつきになること請け合い。 「寒い冬の熱い蕎麦かき」


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鍋にお湯を沸かし、蕎麦粉を投入。加熱を止めて、4~5本の菜箸で徹底的にかき混ぜる。 ぷーんと、蕎麦の良い匂いに鼻孔を広げながら、鍋ごと食卓へ。 通常のつけ汁の3倍程度濃いつゆで食べるも良し。辛み大根を卸して生醤油でも良し。 ごまペーストを醤油で溶いたものも良し。 寒い夜には欠かせない、夜食でもあり、酒のつまみでもある。


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冷たい蕎麦がきもまたうまい。冷たいとろろ汁に浮かべて。 あれこれ具材をトッピングしながら、楽しく食べるのも良い。 実は・・冷たい蕎麦がきに、熱燗もまたうまい。 「蕎麦がきのすり流し汁」


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蕎麦がきを作り、小さくちぎり、冷蔵庫で冷やす。 きのこ、青菜、鶏肉、鴨などの具もだし汁で煮て冷やす。 冷たい皿に、蕎麦がき、具を入れ、冷たいだしととろろを流しかける。


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蕎麦で作るクレープといえば、キャビアを思わせる。 でも、わいわい作って色々巻くのも楽しい。 じゃがいものシャキシャキ炒めや、鴨肉のロースト。 焼き鳥や茄子の油味噌などもおいしい。 手巻きが楽しい「蕎麦クレープの包み」

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蕎麦粉に1~2割程度小麦粉を混ぜ水に溶く。 フライパンに薄く油をひき、広島風お好み焼きの要領で、 薄く丸く生地を広げながらクレープ状に焼く。 焼き加減はお好みで。焼き過ぎも香ばしくておいしい。 中の具もお好みで。今回は聖護院大根と薩摩揚げの炊き合わせを 中に入れて、大根のお汁がクレープに染み込みかけたところを 口に頬張りました。つぶあん等甘いものを入れると楽しいデザートに早変わり。


旦那の居場所、今回は「蕎麦(そば)」のおいしさについてでした。 蕎麦粉の料理を試作するに当たっては、「そばの里」さんの一番粉(石臼の1回挽き)を使わせて頂きました。 流石に粉が良いので、どの料理も味も香りも抜群でした。 4歳の娘もすっかり蕎麦がきのファンになったみたい。女将は、辛み大根と生醤油で 食べる蕎麦がきが、あまりにお酒に合うというので大層気に入った様子。 日本の旅の楽しみの一つは、行く先々で蕎麦を楽しむことにある。

太くて黒い田舎蕎麦、白くて繊細な更級系。噛み切れないやつ、短いやつ。 「わんこ」「出石」「瓦」「へぎ」・・・郷土の蕎麦の良さは味よりもまず、風土。 色は?太さは?固さは?つゆは?もう想像しながら未知の土地で蕎麦を食べる幸せといったら無常の喜び。 それにしても、ここはうまそうだなという「店構え」に出くわすと、さして腹が減ってなくても さっと「暖簾」をくぐってしまうというから、ホント蕎麦の魅力とは不思議なものです。
(2000年12月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第25回 椎茸礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


椎茸が食せるようになったのは、中学に入ってからだ。 それ以前は、なんとも苦手な食べ物の一つだった。 スライスした奴が八宝菜、野菜スープなどに入っていたら、 取り除くのに一苦労したモノだ。 何が苦手だったかといえば、1にスライスした時の見た目。 片側は黒の表皮があり、片側は無数のヒダヒダがあり、顕微鏡で覗いた 微生物の様な形をしている。 それから、あの食感。たいていは、炒め煮になっているので、 「ニョロニュル」という感じ。

胃袋の中で、あのヒダヒダが動き出し、ニョロニョロニュルニュルと 自由に身体中を駈けめぐる。そんな連想をふくらませた。 食べれるようになったキッカケは、丸のままの椎茸を焼いて がぶりと食べた時からだ。見慣れた形、歯切れよい食感、 ヒダヒダにたまったおいしいおつゆ、それからというもの、椎茸が好きで好きで堪らない。


● ● ● ●椎茸のうまさの秘密 ● ● ● ●

椎茸のうまさを一番堪能できるのは、椎茸釜飯に他ならない。 味付けした干し椎茸のスライスを山盛りにして。 炊きたての釜の蓋を取るなり、ぷーんと良いにおいが立ちこめる。 椎茸のうまさの神髄は、あの香り、そのものだ。 味蕾にまで攻め寄せて来る香気。特に香りが強いのは干し椎茸。 風味の正体はレンチオニンにという物質。「干す」ことでレンチニン酸が分解され、この成分が生成されるという。 一方、生椎茸には、この香りに加え、野生の雑木林を思わせる野趣に飛んだ風味を持っている。 あまり洗わないで使いたい。 味はというと、噛むほどに口中に広がるうま味。椎茸のうま味はグアニル酸というアミノ酸。 こんぶのうま味やかつおぶしのうま味と相まって、飛躍的にうま味が増す。

ご存知「ハイミー」という調味料は、この昆布、かつおぶし、椎茸のうま味を複合したうま味だし。 椎茸のうま味は、煮物や麺類などのだしに最適。コクと深みを増す最高の調味料だ。 甘味との相性もよく、やさしく柔らかなうま味。塩かど、酢かどを取り、隠し味に使えば 個性の強い素材や調味料の独走を鎮める調停者になる。 食感はコレ不思議。「生」と「干し」では大きく違う。 千変万化なのは「生」の食感、加熱の具合でシャッキからニョロニュルまで楽しめる。 ただし、どちらにも共通なのは、肉厚がうまい、ということ。 傘があまり開いていない、肉厚のモノを選びたい。 「生椎茸」は食感を楽しみ、「干し椎茸」は香りと深い味わいを愛でたい。


● ● ● ●干し椎茸の香りを ● ● ● ●


日本産の椎茸は春と秋が旬。しかし、原木栽培でなく、ハウスや、おがくず栽培のものは一年中手に入る。 ピンきりなのは「干し椎茸」。傘の開き具合、肉の厚さ、傘の色や亀裂の具合で価格も違う。 この違いは、栽培の環境や収穫の時期によって異なり、手塩にかけて育てた努力の結晶だ。 当家では「冬茹(どんこ)」は高くて使えないので、なるべく肉厚な「香茹(こうこ)」クラスを求めている。

肝心なのは使い方。戻す前にもう一度日光に当てる。日向臭さを取り、ビタミンDも増える。 戻しは水でゆっくりと。最低5時間。レンチオニンを抽出するまでにこの程度の時間が必要だ。 お湯で戻すと苦みが出るので水を使い、柔らかくならなければ砂糖を入れると早く戻る。 中国料理のプロはここから更に蒸していくが、家庭ではこれで充分。 綺麗に澄んだ戻し汁に鼻孔を広げて、恍惚の表情で酔いしれる旦那の姿を女将もまだ見たことがない。

■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、椎茸料理アレコレ・・ ■■■
焼きたての生の椎茸に醤油を垂らしてガブリとやった時から、椎茸好きになった。 しかし、この食べ方の欠点は椎茸の表面が乾燥する事。 そこでオリーブ油でマリネした「椎茸のオーブン焼き」 イタリアンに椎茸丸ごとのおいしさを楽しもう。


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玉葱をざくざくと粗みじん。椎茸の軸とアスパラは小口に切る。 これをオリーブオイルでマリネし塩こしょう。 椎茸の傘は水気を切り、これもオリーブオイルで表面をコーティング。 オーブン皿に椎茸を並べ傘の中に詰め物のマリネを乗せる。 後はオーブンで焼くだけ。余熱済みなら、250度で8分程度。 好みで焼きたての傘にバルサミコを垂らしても良い。


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干し椎茸の煮物は本当に美味しい。 汁気を切って、てんぷらにすると、とてつもなく、うまい。 余りのお節でも良いが、わざわざ作るだけの価値がある。 秋の行楽弁当の顔ぶれには最高の「煮付け椎茸のてんぷら」


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干し椎茸を水で戻して5時間、戻し汁を加えながら、酒、みりん、醤油、砂糖で煮付ける。 汁気を切って、てんぷらにする。当然だが天つゆなどなくて良い。パン粉を付けてフライも良いし、片栗粉をまぶして唐揚げでも良い。


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一口大に切ったうまい素材のオンパレード。 味の決め手は我らが「干し椎茸」。 ワインに良し。お酒に良し。紹興酒にも良し。 冷めてもうまいので、オードブルにも良し。 前の日に作って冷たいまま食べて良し。 良い良いずくめの「牛肉と椎茸のうま煮」

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干し椎茸を戻して扇形に1/4カット。これと同じくの三角大で大根・牛肉をカット。 牛肉はバラ(こってり派)かもも(あっさり派)。ごぼうはやや小さめの乱切り。 牛肉は酒、塩、胡椒でよく揉んで片栗粉をまぶす。 たっぷりの油で牛肉、ごぼう、大根、しいたけを炒め、酒、みりん、戻し汁で煮込む。 砂糖、醤油で味を調えながら、柔らかくなったら出来上がり。 仕上げにオイスターソースやごま油を垂らしても良い。 汁気がなくなるまで、煮詰めると味がしみ込み、照りが出る。



旦那の居場所、今回は「椎茸(しいたけ)」のおいしさについてでした。 椎茸は免疫機能を強くするレンチナンという多糖類を含んだ食品。 旦那は以前、椎茸からこの制癌剤を作る医薬工場に勤務していたことがある。 何トンもの椎茸から取れるレンチナンはごくごく微量。前処理工場では昼夜、椎茸の香りがしていた。

また、エリタデニンという物質がコレステロールを下げることも知られており、食物繊維、ビタミンDも豊富。 と来れば、この椎茸というキノコ、おいしいだけでなく、実は有り難いキノコなのです。 干し椎茸といえば中国料理。乾物同士、あわびやふかひれ、なまこ等との相性も抜群。 しかし、どんなに高級な素材と一緒に使っても、もしかしたら、これは、椎茸料理じゃないかなって思えるくらい、主役のうまさを引き立てつつ、主役を圧倒する程 「うまい!」というからほんと椎茸の魅力とは不思議なものです。
(2000年9月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第28回 納豆礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


最も愛する食材、それは納豆をおいて他にない。 小学生の頃、毎朝納豆をおかずにごはんを食べた。たまさか納豆の無かった日には、 親友に決まって「今日納豆食べてこなかったでしょう?」と指摘を受けた。 彼に言わせると、納豆を食べない日は、朝の表情が違うと言う。 最近では、納豆も、臭いや味のマイルドなものが増えている。スーパーの店頭では なかなかに満足いくものが手に入らす、母の実家「水戸」からケースで取り寄せている。


● ● ● ●納豆のうまさの秘密 ● ● ● ●


納豆のうまさは、あのネバネバにある。混ぜ方がすべてを決する。手に合うサイズの安定感のある鉢に入れたら、 箸でひたすらにかき混ぜる。混ぜれば混ぜるほど、糸が出る。この糸、混ぜる事に細く、短く、数が増す。 だんだん固くなり、持ちにくい容器では力負けしそうになる。醤油や芥子は混ぜながら少しずつ入れる。 糸はやがてネバに姿を変え、あの独特の風味が倍加する。 こうして、申し分のない納豆ができあがる。

好みでいろいろなモノを加える時も、まずはここまで混ぜることが大事。 豆の大きさ、固さ、豆そのもの味や、発酵による臭いや味の強さなど、納豆の味を決める要素は単純ではあるものの、 「これぞ」と思うものを探し当てるには時間がかかる。夏は発酵が早いので、食べるタイミングには冬より気を使う。 故に印象として「納豆」は冬の食べ物。もちろん、ちょっと発酵し過ぎのものも、風味が増してまた良いもの。

原料の大豆からは想像もできない程、うま味に富み、風味に豊かな納豆。これもすべては納豆菌さんのおかげです。 ああ、本当にうまいかな、納豆。

● ● ● ●納豆の持つ郷愁 ● ● ● ●


中学時代の学習塾の恩師から、子供の頃納豆売りをして家計を助けていた話を聞かされた。 北海道の貧しい炭坑で生まれた人だった。「秘密のアッコちゃん」のエンディングの曲にも、「納豆売り」 が登場するが、文京区に生まれ育った私にとっては、この「納豆売り」だけは未だ遭遇したことがない。 戦後間もない北国の寒い冬の朝、少年が納豆を売り歩く姿に思いを馳せると、素朴な納豆の味にもなにやら郷愁を感じてしまう。
 

■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、納豆料理アレコレ・・ ■■■


納豆はやはりご飯との相性抜群。そのまま温かいご飯にかけるも良し。 お茶漬けや雑炊もおいしい、炒飯に入れれば、より風味が引き立ち食欲をそそる。 ご飯の上に納豆を載せ、ドライカレー(カレー礼賛参照)の様に具の小さいカレーをかける。 生卵をぽんと入れて、かきまぜながら食べれば、あまりのうまさに悶絶してしまう。 飲んだ後の締めには、納豆のうま味で楽しむ「納豆雑炊」をお勧めしたい。
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鍋にお湯を沸かし、ご飯を入れ、丁寧に炊いていく。 味付けは、酒、みりんが少量に、ほんだしがベース。塩で味を調える。 具はシンプルに。ねぎの小口切りがベスト。 基本に忠実に丁寧に混ぜた納豆を半量入れて、味と風味をつけていく。 火を止める間際に食感のための残り半量の納豆を入れて完成。


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彩りと食感の変化を楽しみながら、酒の肴に楽しむ納豆。 は料理をおいしくするの基本の5色。 納豆のネバの主成分ナットウキナーゼは、血栓を溶かすパワーを持った酵素。 寝ている間に出来やすい血栓。朝より夕に食べるのが効果的。 「納豆食べたから」を理由に、お銚子もう一本飲んじゃおう。 箸休めにならない程うまい「五色納豆」。ねばってもお箸は舐めないでね。


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材料はずべて小さな賽の目。納豆の粒より小さめに切る。 赤は、まぐろの造り。白は大根、蕪の漬け物やイカの造り。 黄はたくあんや瓜の古漬け等。黒は焼き海苔、緑は胡瓜やオクラ等。 大根や胡瓜は生でなく漬け物を使うこと。 よく混ぜた納豆の上に五色のトッピング。よく混ぜて食べる。

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