店主の食卓

旦那の居場所第40回 「おくら(秋葵)」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


オクラの原産地はアフリカ。ここではトマトベースのシチューにオクラを入れて食べる。今年5月のアフリカ出張では、ウエットマーケット(市場)に山積みされたオクラに遭遇。日本で食べるオクラより短く、太さはほぼ2倍以上、ずんぐりむっくりのオクラは、かの地では極めてポピュラーな野菜。日本に渡来したのは幕末だが、小学校の頃(30年程前)からよく見かけるようになったと思う。
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独特の形や香りから、喰わず嫌いの御仁も多いが、丸ごとかじりつく、オクラのうまさといったら言葉にできない。
さて、旦那の居場所、今回は「オクラ(秋葵)」を礼賛したい。

ナイジェリア、ラゴスのウエットマーケット「Miles12」(12マイル市場)でオクラを売る人
(現地の人の暮らしを支えるこのマーケットに立ち寄る日本人は、旦那の勤める会社=「味の素㈱」の現地駐在員くらいしかいない)
PhotoBy HiroharuMotohashi May,2002


● ● ● ● オクラうまさの秘密 ● ● ● ●


オクラはあの独特のネバネバがうまい。混ぜるほどにねばりが増す。和え物に良し。酢の物に良し。汁物にすれば、このネバネバのおかげで、ぬめりのある汁になる。夏の暑い夕方に、このぬめりのある冷たい酢の物なんかで、キューッとビールを飲んだら最高だ。活動の鈍った胃袋に、ネバネバが活力を与えてくれる。醤油、酢、味噌との相性も良く、また、かつおぶしや「味の素」のうま味でエグ味は消える。山芋、ジュンサイや納豆など、他のネバネバ系の食材と合わせると、うまさが倍加する。しょうが、トマト、なす、きゅうり、みょうが等、夏向きの野菜との組み合わせも抜群だ。


● ● ● ● オクラのうまい食べ方 ● ● ● ●

6歳の娘はオクラ好き。さっとボイルしたオクラを丸ごとマヨネーズをつけてバリバリ食べている。一本丸ごとバリバリ方式なら、一夜漬けやマリネ、ピクルスにしてもうまいし、ぬか漬けもいい。食感を残して丸ごとカラッと揚げた天ぷらも最高だ。煮込みなら、ぶつ切りにして、ナスやトマトと一緒にオクラカレーもおいしい。何よりシンプルなのは朝ご飯。小口に切ったオクラに醤油を入れてよくかき混ぜ、かつおぶしや「ほんだし」で味付け。炊き立てのアツアツご飯にかければ、ネバネバと一緒に、ご飯一膳があっという間に胃袋に落ちていく。種子は舌に残るし、苦味があるので、日本料理では取り除かれることが多い。家庭では気にせず、ぷつぷつ食べてしまいたいが、あの苦味が苦手という人は、種を除いてお試しあれ。


■■■ ・・ホントにうまいおくら料理あれこれ・・ ■■■

夏を涼やかに過ごすためは、食べ物の工夫が欠かせない。きりリと冷やした稲庭うどんをネバネバのオクラつゆにつけて食べる。「浴衣の君はすすきのかんざし~」なんて、拓郎を思わず口ずさんでしまう。風流な「稲庭うどんオクラつゆ」

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オクラを小口からスライス。市販のめんつゆを鍋で温めオクラを茹でる。そのまま冷やせば、ネバネバのめんつゆの出来上がり。薬味はみょうが、しょうがを必需として、後は好みで。乾麺の稲庭は程よく茹でて冷水できりり冷やして。


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オクラのバター炒めは予想以上にうまいもの。ぴりりと胡椒を利かせて。「オクラの黒胡椒バター炒め」
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オクラは斜めに小口きり。器に取りネバリがでるまでかき混ぜる。醤油と「ほんだし」で味付け。鍋にサラダ油を熱し、オクラをさっと炒め、黒胡椒をふる。最後にバターで風味をつける。

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原産地に極めて近い食べ方。トマトベースの味付けでオクラを煮て食べる。夏向きに上品な。加熱時間は1分程度、夏にはうってつけの簡単メニュー。「オクラのトマトスープ」

okura04.jpg オクラは刻んでかき混ぜる。鍋に「クノールカップスープ 完熟トマトのポタージュ」を入れて分量のお湯で溶く。これに刻みオクラを入れて1分間程茹でて、器に取り、冷蔵庫でよく冷やす。スープとして飲んでも良いが、細いロングパスタに絡めて、冷たいスパゲティーにしても良い。ご飯にかけても、意外とおいしい。



旦那の居場所、今回は「オクラ(秋葵)」のおいしさについてでした。花が終わると、残されたガクが伸び始め、すくっと天を目指して、あっと言う間に成長するオクラ。 オクラのひょろりという尻尾は、実は天に向かって伸びるオクラの命の先端なのでした。

カルシウム、鉄、カロチン、ビタミンCを多く含むこの野菜、やはり夏にたくさん食べたい野菜の代表です。 咽喉越し最高の冷たい茶碗蒸、具は何かなとドキドキしながら、食べ進むにつれ、五稜の形の緑のオクラが出てきただけで、すーっと涼やかな気持ちにさせてくれるというから、ほんと「オクラ」の魅力とは不思議なものです。

(02年7月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第39回 「ハンバ-グ」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


岡山で業務用冷凍食品の営業に携わっていた時の話、オープン前のテーマパークの準備室に通い詰めた。料理長と一緒にメニューを考え、いよいよ自社商品の冷凍ハンバーグの採用に漕ぎつけた。開園後は連日の超満員、熱湯が煮えたぎる巨大な鍋から、ボイリングパックのハンバーグを取り出しては、次から次へと鉄板で焼き風味を付けていく。へとへとになりながら、皿に盛り付けるそばから、なくなっていくハンバーグ。ハンバーグの思い出といえば、GWの連休を一日も休まずに焼いた自社の冷凍ハンバーグを忘れることはできない。

● ● ● ●ハンバーグの郷愁● ● ● ●

我々の世代にとってハンバーグは家庭で作るもの。育ち盛りには母親が作るハンバーグ1個でどんぶり飯を3杯は「おかわり!」した。家庭のハンバーグは具の玉ねぎのカットが大きく舌に残るところがしみじみとした味わい。「洋食店」と称する外食店で初めて「ハンバーグ」を食べたのは小学校も高学年になってからだが、プロの作ったハンバーグの絶妙の食感とナツメグの香りに言い知れぬ感動を覚えたものだ。

「マクドナルド」や「ウエンディーズ」のハンバーガーを初めて食べた時の感動。用賀の「プレストンウッド」で食べたジュージューはねるハンバーグ。自分の成長と共に何故か「おいしいハンバーグ」も進化を遂げる。「ハンバーグ」にまつわる遠い10代の頃の記憶。自分のお財布で奮発するにはぎりぎり限界の、その時々のちょっぴり苦く酸っぱい、淡い思い出の名残ともいえようか。

● ● ● ●うまいハンバーグを焼きたくて● ● ● ●

「洋食」のプロに技を習ったことがある。簡単そうで難しい「ハンバーグ」。軽快なリズムの空気抜きは素人にはなかなか難しい。しかし、盗むべき技は、これだけにあらず。おいしく作るための重要ポイントが随所にある。具の下拵え、味付けと具のこね具合、最も難しいのは、焼き加減と焼き上がりの見極め。本当にうまいハンバーグはソースなど要らない。ナイフを入れた瞬間に中から出てくる肉汁、口に含んだ時の食感。フライパンの状態やオーブンの種類によっても微妙に勘所が変わるから、家庭で何回か試して「これぞ」という焼き方をマスターしたい。

■■■ ホントにうまいハンバ-グ料理あれこれ ■■■


「基本のハンバーグの具」

経験上、たまねぎは、ひき肉の半量程度がバランスとして良い。「洋食店」ではたまねぎは4分の1程度が主流と思うが、家庭のハンバーグは玉ねぎ多目がうまい。玉ねぎは香りと甘さのために3分の2をバターで炒める。食感のために残りは生のまま、細かめのみじん切りで使う。炒めた玉ねぎは良く冷やし、生のたまねぎ、牛乳で浸した生パン粉、玉子をひき肉に良く混ぜる。ひき肉は牛と豚の合い挽き。塩・胡椒・ナツメグで味付けする。

肉類は焼く直前に塩を振るのが基本だがハンバーグは例外。塩を入れこねることで、塩がたんぱく質に作用してひき肉の粘着力が増し、食感を向上させる。とにかく良く練ることが肝心。あまり練るとひき肉がつぶれて食感が悪くなるのではと考え勝ちだが、これは反対。練りが足らないとボソボソのハンバーグになるので注意しよう。

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本当にうまいハンバーグにはソースは要らない。「オーソドックスなハンバーグステーキ」熱々をそのままふーふー言いながら食べるのみ。
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オーブンを200℃で予熱。「基本のハンバーグの具」を厚めに成型。(手のひらを使ってよく空気を抜きし、最後はまな板にパンと打ち付けて包丁で成型)フライパンで両面を固める程度に焼き、バターを乗せオーブンで仕上げる。ソースは使わず、肉の風味とナツメグの香りを楽しむ逸品。
 


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「失敗しない煮込みハンバーグ」デミグラスベースのシチュー状のソースで煮たやわらかい「ハンバーグ」。「ハンバーグ」ってこんなにうまいの?と思うに違いない、失敗のないハンバーグ。

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玉ねぎのざくぎり、にんにく・にんじんの摺りおろしをオリーブオイルで炒める。これに市販のデミグラスソース、ウスターソース、トマトケチャップ適量を入れてシチュー状のソースを作る。「基本のハンバーグの具」で作った小さ目のハンバーグはこんがり両面焼き、八分通り火が通ったらこのソースに入れて煮る。
いつまでも「熱々」。外側はかりっと、中はジューシー。味、豪華さ、失敗の無さ、どれをとっても自慢のハンバーグ料理だ。

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和風のテイストが加わるとハンバーグはとても上品な料理に変身する。ファミリーレストランでは普通のハンバーグに醤油ベースの大根おろしや、きのこのソースをかけたものを和風ハンバーグと名付けてはいるが・・・・。例えば、具に乾椎茸やたけのこ、ごぼうを使う。味付けに醤油や味噌を使う。香辛料に山椒を使う。ひき肉に牛肉でなく鶏肉を使う。和風ハンバーグの世界が果てしなく広がる「和のハンバーグ」

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たけのこ、なすを刻んで炒めて冷まし、「基本のハンバーグの具」に混ぜる。香辛料は山椒。団子状にまとめてナスの器に入れてオーブンでじっくり仕上げる。焼き味噌、しょうがのしぼり汁を添えて熱々を食べる。



 

旦那の居場所、今回は「ハンバーグ」のおいしさについてでした。フードプロセッサーがあれば、肉は自分で挽いた方がうまいようです。我が家ではクイジナートが威力を発揮します。手間はかかりますが、包丁でトライするなら塊でなく、うす切りをトントンすれば良いでしょう。一度お試しあれ。具は練りこんでいるうちに温度上昇し、風味を損ないますのでご注意を。

うまい「洋食店」に行き、タンシチューか、ポークチョップか、はたまたビーフカツレツか、なんてメニューを見ながら迷っていると、厨房の奥からぷーんと「ハンバーグ」の焼ける臭いが・・。え~と、タンシチューと海老グラタンと、それから「ハンバーグ」も!なんて結局、この臭いに負けていつも「ハンバーグ」をオーダーしてしまうというから、ほんと「ハンバーグ」の魅力とは不思議なものです。

(02年4月 copywright hiroharu motohashi

旦那の居場所第37回 「シングルモルトウイスキー」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


シングルモルトウイスキーの世界に魅了されたのは、今から12年程前。先輩と通った六本木の店のバーテンダーに、その奥の深さを教えてもらった。シングルモルトとは、ただ一つの蒸留所で作られるモルトウイスキーだけを瓶詰めにしたもので、他のモルト原酒やグレインウイスキーをブレンドしない酒である。その美味しさに魅せられて、どれ程のシングルモルトを飲んできただろうか。 岡山在住時代、地元の老舗バー「リットン」の当時のチーフバーテンダーの薦めで、ザ・スコッチ・モルト・ウイスキー協会に加盟した。スコットランドのエジンバラに本部を置くこのソサイエティーは、プロ、アマに限らずモルトウイスキーを愛する人々の団体で、協会の厳選したシングルカスクの逸品が手に入る。旦那の居場所、今回はシングルモルトを礼賛したい。

● ● ● ●シングルモルトウイスキーのうまさの秘密● ● ● ●


シングルモルト、日本で言えばそれは差し詰め地酒に相当する。スコットランドには多くの蒸留所があるが、それぞれの個性は飲み比べに値する強烈な個性を持っている。生産地区の気候や緯度、立地による違い、蒸留所による違い、水や原料による違い、仕込み樽による違い、熟成期間による違いと、モルトウイスキーの色、香、味、フィニッシュを形作る要素も様々だ。既に操業を終えた蒸留所も多いが、20年30年前に仕込んだものを世に送り出しているところもある。

大麦麦芽(モルト)を発芽により糖化し、発酵させる。これを銅製の単式蒸留釜「ポットスチル」で2回もしくは3回蒸留する。こうしてできた無色透明の荒々しい新酒「ニューポット」をオーク材でできた樽で熟成する。この時の樽はバーボンウイスキーやシェリーの熟成に使われた樽などが使われるが、この樽によっても出来上がりの個性が大きく決する。

保税倉庫の樽の中で、スピリッツは長い歳月をかけて、芳醇でまろやかな、気高い琥珀色の飲み物に変化する。スコットランドの気候と大地が育み、腕自慢の職人達が丹精し、天使に分け前を盗み飲みされながらも20年30年と眠り続けたモルトの傑作。封を切ったばかりのボトルから注がれる重く低いが弾みのある「トクトクトクトク」という音、お気に入りのグラスの内面に垂れる黄金色に輝く足。「樽で眠っていた状態のモルトを何も足さず、取り除かずに瓶に詰めた」スコッチ・モルト・ウイスキー協会のシングルカスクボトルには、スコットランドの風土と作り手の英知までが封印されている。

● ● ● ●旦那愛飲の、お薦めのシングルモルト● ● ● ●

フルボディーのしっかりしたドライ気味のモルトが好きだから、ハイランドのROYAL LOCHNAGAR(ロイヤル・ロホナガー)やスペイ川流域「緑の谷」に位置するGLENFARCLAS(グレンファークラス)が、愛好の品だ。スモーキーなフレーバーを約束する濃い琥珀色、味は、ややフルーティーまたはクリーミーな感じのかすかでふくよかな甘さ、ドライながら余韻が残る後味。水で割ってもしっかりとバランスを崩さない確かさ。こうしたモルトに出会う時は至上の喜びを感じてしまう。

女将も好きな、女性でも飲みやすいものは、GLEN MORANGIE(グレンモーレンジ)、ABERFELDY(アバフェルディー)、BALVENIE(バルヴィニー)、少々重いがROYAL BRACKLA(ロイヤル・ブラックラ)あたりがお薦めだ。ビャクダンのような華やかな香、バニラやハニーナッツ、ラムレーズンのようなスイートな香、シナモンのようなスパイシーな香、フレッシュでフルーティーな柑橘系の香、上品で秀逸な香に包まれて、食後のひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。

● ● ● ●シングルモルトの飲み方● ● ● ●


グラスはチューリップ型の香をより感じるものを使いたい。旦那は女将から贈られたリーデル社のHANDMADEのシングルモルト用を愛用している。静かにグラスを回しながら、色を確かめ、鼻腔を広げ香を楽しむ。ニート(ストレート)でゆっくり味わう。次に水を半量加える。驚くことに大半のモルト・ウイスキーはこの瞬間に表情が激変する。この変化がまた楽しい。食前に楽しむもの。食事にあわせるもの。食後にゆっくり嗜むもの。読書をしながらナイトキャップで選ぶもの。キャンプの時など、愛用のハンティングフラスクにお好みを入れて行き、焚き火の前で飲むのも楽しみの一つだ。シングルモルトとの出会いは、お酒との付き合い方の幅を大きく広げてくれた。

■■■ シングルモルトに合う料理 ■■■

まずは、スモーキーなもの、ハムやスモークチーズ、スモークサーモン等が嬉しい。そして、少し塩気のあるもの。ミックスナッツなどは定番だ。ウイスキーのほのかな美味さを最大限に引き出すには、柔らかい甘さを持つチーズやレーズン等がぴったりだ。
サーモンをクリーミーなウイスキーソースでボイルしたもの等、英国には涙ものの缶詰めもある。スコットランドでは、羊の内臓とたまねぎをミンチにし、牛脂とカラス麦を加えて塩と胡椒で味付けし、羊の胃袋に入れてゆでる「ハギス」という料理が一般的。ハギスはモルトに欠かせないスコットランド伝統の郷土料理、いつの日かスペイ川で釣りでもし、パブでハギスとモルトで乾杯といきたいものだ。

我が家には欠かせない毎朝の定番は、プレーンなヨーグルトにたっぷりのレーズンをかけるもの。このレーズンは1週間分、まとめて土日にウイスキーで戻している。「モルト・レーズン」のおいしさにはびっくり。毎日の鉄分補給にはこのレーズンが欠かせせない。モルトウイスキーのためのオードブルには、クラッカーにクリームチーズを載せ、「モルトレーズン」を山盛りに。レーズンバターよりも格段に上品なレーズンチーズをお試しあれ。
市販のジャムをベースにオリジナルでコクのあるジャムを作ろう。ジャムの用途が果てしなく広がる「大人のジャム」

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レーズンを良くほぐして鍋にいれ弱火で加熱、ごく微量の砂糖とモルトウイスキー少々を入れかきまぜる。ウイスキーが飛んでレーズンがぷっくらとしたら出来上がり。ウイスキーの入れ過ぎ、加熱のし過ぎは禁物。微量の砂糖はレーズン本来の甘味を引き出すためだからほんのちょっとで良い。

「大人のジャム」
市販のジャムを鍋に入れ、モルトウイスキーを少量入れて、混ぜながら加熱。液分が飛んだら出来上がり。ジャムでもマーマレードでもOK。プリザーブタイプのものがお薦め。バケットに塗りオードブルにしたり、クロテッドクリームととともにスコーンに合わせて、アフタヌーン・ティーを楽しもう。


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スモークサーモンとウイスキーの相性は抜群だ。なかでも、ウイスキー樽の廃材チップで燻したスモークサーモンはウイスキーと合わせる料理としては最高の逸品だが、入手困難。日本でウイスキーと共に楽しむ時は、せめて、しっかりスモークした上等なものを選びたい。価格と品質のバランスからすると「王子のスモークサーモン」がお薦めだ。これに特製のソースを添える「スモークサーモン・レモンウイスキーソース」

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完熟したオリーブをモルトウイスキーで軽く煮ながら、アルコールを飛ばし、砂糖、塩、レモンの絞り汁、ケッパーを入れて、片栗粉かコーンスターチでトロミをつける。白菜は繊維を切るように繊切りにし塩で揉んで水気を出す。2時間ほどして良く絞り、微量の砂糖、白ワインビネガーで薄く味付け。皿に白菜、スモークサーモンを盛り付け、冷やしたソースを添える。


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モルトウイスキーには羊肉の料理が欠かせない。「ハギス」は再現困難だが、ラム肉でソーセージ風のハンバーグを楽しむ。 厚めに焼くか、薄めに焼くかは、お好み次第で、「ラムのソーセージ風」

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弱火で甘味が出るまで炒めた玉ねぎのざく切り・にんにく、ラム肉、タイム、塩、胡椒、グレープシードオイル少々をフードプロセッサーで粗く挽く。好みの厚さ、形に整形して、フライパンで両面を焼く。厚さがあるならその後オーブンで中まで火をす。余分な脂はしっかり落としたいので、加熱はしっかり臭いや脂が気になる場合は、焼いた後軽く茹でてお湯を切る。ソースは不要、そのままで充分いけるが、お好みでウスターソースとケチャップを。

 


旦那の居場所、今回は「モルトウイスキー」のおいしさについてでした。旦那愛読の書に、ブライアン・フリーマントルの「チャーリー・マフィン」シリーズがある。よれよれのスーツを着て、恐ろしく幅広のハッシュ・パピーを履いた英国の諜報部員「チャーリー・マフィン」は、一日の終わりに、シングルモルトを飲みながら、その日一日の無事を思い、見落としたことがないかを反芻する。 何をやっても様にならないチャーリーでさえも、このシーンは何故かしっくり来る。

めまぐるしい一日の終わりに、ウイスキーボトルを傾け、ほんの一杯。疲れもストレスもグラスのアロマとともに消えうせてしまうというから、ほんとシングルモルトウイスキーの魅力とは不思議なものです。

(02年2月 copywright hiroharu motohashi)
参考文献 「モルトウイスキー大全」 土屋守 著 (小学館)

旦那の居場所第36回 ほうれん草礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


『ポパイ ザ セイラーマン』の調べに誘われて、今日もポパイはほうれん草の缶詰めを一握り。あふれ出てきた「ほうれん草」を一気に頬張ると、いきなり力みなぎり・・・・。お望みの結末が待っている。子供心に「ほうれん草」は、力の源、栄養源、身体にとっても良い野菜だと認識していたものだ。そして、「ほうれん草」の缶詰めなるものが存在する、アメリカという国はどえらい国だと感心した。

● ● ● ●ほうれん草うまさの秘密● ● ● ●

ほうれん草のおいしさは、噛むほどに広がる甘さに尽きる。やや土臭ささはあるものの、くせや匂いは少ない。歯切れがよく、筋っぽさや硬さを感じさせないのも食べやすい理由と言える。

甘さとともに感じるエグ味は、何故か年々淡白になっているような気がする。このアクの正体はシュウ酸だ。このアク故に生食には適さないほうれん草だが、近年ではアクの少ない生食用も出回っている。生のほうれん草のサラダをはじめて食べたときの感動は忘れられない。カリカリベーコンとの相性の良さ、醤油ベースの和風ドレッシングが引き立てるほうれん草の甘味。今ではすっかり居酒屋やビアホールの定番メニューに成長した。

● ● ● ●ほうれん草のうまい食べ方● ● ● ●

馴染みの深いほうれん草、家庭で一番よく食べられている料理は果たして何だろう。「おひたし」か「ごまあえ」か「味噌汁の具」か、はたまた「バター炒め」も美味しい。葉の切れ込みが大きくて柔らかい東洋系は「おひたし」に、葉が厚く形の丸い西洋系は炒め物に良いというが、現在では「治郎丸」など両群を交雑した中間品種の栽培が多い。油脂によく合うので、炒め物、特にバター炒めはおいしい。クリームやベシャメルソースとの相性も良い。

グラタンに入っていると何故かほっとする野菜でもある。少し手をかければ、ピューレ状にしてスープやカレーソースにもなる。酢にもよく合うので、ポン酢、ドレッシングでおいしく食べられる。卵や胡麻との組み合わせも捨てがたい。リゾットやチャーハンなど、米料理もおいしい。鮮やかな緑が食欲をそそる、ああ、うまいかな、ほうれん草。


■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、ほうれん草あれこれ・・ ■■■
ほうれん草は冬に甘味を増す。外に寒風を聞きながら、コタツでふーふー食べる鍋。犬の遠吠え、火の用心の拍子木の音だけが聞こえる夜更け。日本の冬にはシンプルな「常夜鍋」が良く似合う。毎晩食べても飽きない不思議な鍋だ。

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具は豚ばら肉のスライス、ほうれん草のみ。これを鍋で水炊きにしながら、ポン酢で食べる。
薬味はたっぷりの大根おろしと七味唐辛子。そして、なくてはならないのが酒の燗。
ほうれん草は根の先の赤いところが甘く一番美味い。鉄分もここに集中している。
捨てずに株を一本一本指で分け、間の砂やごみをよく洗い捨てずに食べよう。

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たっぷりとごま油とにんにくの風味を吸い込んだほうれん草は驚くほどうまい。手早く作る「ほうれん草のナムル」

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良く洗ったほうれん草、一つまみの塩を入れた、たっぷりの熱湯に最初は根元を30秒程つけ、次に全体をゆでる。
すぐに冷水に取り、退色を留める。絞ると苦味が出るので、絞らずに両手で挟むようにして少しずつ水気を切る。
水気がちゃんと切れていれば、とても美味しい仕上がりになる。3~4cmに切り良く広げてボールへ。
ほうれん草一束に対して、ごま油小匙2、塩小匙1、にんにくのすりおりし少々。これをボールに入れて手で優しく混ぜる。
良く混ぜるうちに油が段々乳化したような状態になり、調味料がほうれん草全体に行き渡る。
力をいれずによくかき混ぜ、ほうれん草の繊維の隅々まで油がしみこめばOK。


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ほうれん草は和風だしや卵との相性も良い。また、食感のコントラストから若布と一緒に食べるのも美味いもの。手早く子供のおかずにも最適なほうれん草と海草で作る「ほうれん・草の卵とじ」


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生で食べられるほうれん草、戻した若布をフライパンに重ね、だし汁、溶き卵をかけてさっと煮る。
 


旦那の居場所、今回は「ほうれん草」のおいしさについてでした。
一年中食べられる便利な食材ですが、やはり冬場の方が葉がしっかりしていて、甘味が強いように思います。現在のイランあたりで栽培が始まり、ネパール・中国を経て日本には16世紀に伝わってきたといいます。「ほうれん草」の名はネパールの地名に因んだものですが、一般には「唐菜」「赤根菜」の名で日本各地に広まったようです。 「ほうれん草」も良いけど、「赤根菜」なんて、なんとも素敵な名前ですね。鉄分、カルシウムを多く含む野菜で、栄養価も高く、冒頭の「ポパイ」のイメージはここから来たのでしょう。

寒い冬の朝、「ほうれん草」の温かい味噌汁に迎えられて、一日が始まる幸せ。この野菜に出会うと、なんともほっとするような、優しい気分にさせられるというから、ホントほうれん草の魅力とは不思議なものです。
(02年1月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第35回 お粥(かゆ)礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


アジアの朝にはお粥が良く似合う。朝食の迎え方も国それぞれなら、お粥の個性もそれぞれ。二十歳の頃、柔道の遠征で訪ねた台湾。台北の寄宿舎で食べた素朴なお粥のうまさは今も脳裏に焼き付いている。一口食めば、口中に清清しい甘さが広がり、胃腸の疲れを癒し、身体全体を整えてくれるようなやさしさを味わえる。お粥の朝食には、米を主食としてきた民族の秘めたるパワーの源泉があるような気がする。


● ● ● ●いろいろなお粥たち● ● ● ●


喧騒とともに明ける香港の朝は、「粥麺専家」なる粥専門店の前で出勤前にお粥をすする人々の光景で始まる。日本の粥とは異質な炊き上がり。米は、水と油を吸い込み完全に原型をとどめぬまでの状態になっている。米のでんぷん、だしの水分、そして油が乳化しているとも思えるほどの渾然一体感だ。油条(揚げパン)や香草(パクチー)をはじめ好き好きのトッピングは楽しいし、具材もピータン、牛の内臓、魚ボールなどバラエティー豊か。具のアクセントは味付けにはとどまらず、食感や香りまで幅広い奥行きを見せ付けてくれる。

土鍋の蓋を開けると立ち込める湯気。冬の冴え渡った空気にさっと暖かさが広がる。日本のお粥ほど冬の静けさに似合う食べ物はない。こちらはしっとりとした味わいの質素で素朴なお粥。水の良さ、昆布のだし、白粥が基本のやさしい味だ。京都では「おかいさん」として、朝に限らずポピュラーな食べ物。白粥をベースに梅粥、鮭粥、茶粥、小豆粥、芋粥、根こんぶ粥など、おいしいお粥を挙げればきりが無い。生米からじっくり炊き上げる「お粥」は「雑炊」「おじや」や「お茶漬け」にはない素朴な魅力を持っている。

● ● ● ●七草かゆの思い出● ● ● ●


七草かゆは子供時分の私にとって最も辛いイベントの一つだった。さしてうまくもないものを朝から食べさせられることも辛いが、この日を境に正月気分は消えうせ、3学期のバタバタに飲み込まれていくことになるからだった。「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これや七草」母親に教えてもらった春の七草。こうした生活の知識の伝承者は決まって我が家では母親だった。

■■■ 家庭でもほんとにおいしい、お粥あれこれ ■■■

中国粥のうまさの秘訣は、第一にだしのうまさ。干海老や干貝柱、干椎茸など、アミノ酸豊富な乾物の旨味や豚肉、鶏肉などをベースとした舌に嬉しいだし。グルタミン酸をベースに鶏のイノシン酸、椎茸のグアニル酸、貝柱のコハク酸。うま味の相乗効果でとてつもないうまさのだしが出来上がる。そして、第二に米の食感。花の咲いたようなふわっとした状態が目標だ。家庭でも簡単にできる「滋味あふれるダシの粥」。鶏肉のうま味と白菜の甘味をたっぷり吸い込んだ極上の粥。疲れがひどい時、身体が弱っている時、目が醒めない休日の朝などは最適だ。ただし、だし取りには手間がかかるので、朝食に食べるためには前の晩にだしだけは作っておくこと。
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たっぷりの水を火にかけ、鶏もも肉一枚、しょうが2~3片、干椎茸、あれば干貝柱をことこと茹でる。鶏肉は柔らかくなるまで煮るが、肉にまだうま味が残っているうちに引き揚げて酒。醤油に漬け込んでおく。
次に、だしに白菜(1/4株程度)をたっぷり入れ、煮溶けるくらいまで煮込む。米はよく洗い、完全に水気を切り、ゴマ油とまぜておく。この油がやがて加熱することで米を柔らかく内側から破壊し花が咲くような食感に仕上げてくれる。
具材をすべて引き揚げただしに、ゴマ油を吸わせた米を入れ、はじめは強火、煮立ってからは吹きこぼれない程度の中火から弱火にしてコトコト炊いていく。
最後に塩で味を調える。だし材料の鶏肉や椎茸、白菜はトッピングとして食べてしまおう。


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お粥と一緒に炊くと、芋や豆は殊のほかおいしく炊ける。粘度の高い水分が熱媒体となるため、火の通りが均一でやさしくなり、芋も豆もほっくりと仕上がる。表面も乾燥しないために、色艶も素晴らしい。そして、なんと言っても、芋や豆の甘さが米とは相性抜群。芋粥なんてちょっと古臭い感じだけど、実はとってもうまいもの。一風変わった芋がゆなどお試しあれ。「さつま芋のミルク粥」

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米はよく洗い一晩ひたひたの牛乳につけておく。
翌朝、水・牛乳を足して米を炊いていく。煮立ったら火を弱め、よく洗ったさつま芋を皮ごと投入。
水と牛乳の比率は5:1程度。コンソメとバターを入れて味付けをしたら5分程度かき混ぜて完成。
米から出るトロミのためか、牛乳とは思えない程とてもクリーミーな仕上がりになる。


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お粥と黒胡椒の相性はとっても良い。また、九州でポピュラーな柚子胡椒との相性も抜群だ。お酒をたっぷりと使った白粥に、ピリッと辛いシンプルな日本の朝粥は如何。「美酒粥 柚子胡椒風味」

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たっぷりのお酒に、研いで水気を切った米を入れて、じっくりお酒を吸わせておく。
酒の3倍程度の水を足して、強火にかけ沸騰したら火を弱める。お酒が入っているので最初は蓋を開けたままで炊いていく。
アルコールがすっかり飛んだら蓋をして弱火でコトコト。最後に塩だけで味を調える。酒のかどを取ってまろやかにするために、 マグネシウム、カリウムを多く含むミネラル塩を使いたい。カリウムの含有率からすると「瀬戸のほんじお」がお勧め。
黒胡椒、柚子胡椒を好みで粥に入れかき混ぜて食べる。


旦那の居場所、今回は「お粥(かゆ)」のおいしさについてでした。お腹をこわした時にツキモノのお粥ですが、日常からお粥を作って食べる食習慣というのも大変良いものです。 日本では京都以外にはそうした習慣は少ないようですが、米を主食とする他国ではポピュラーです。粒が完全に壊れているお粥は白飯より消化吸収が良く、同じ分量の生米でも、はるかに満腹感があるわけです。

今から15年程前、体重が75kgを超えて緊急ダイエット、10ヶ月で8kg程減量しましたが、 この時の施策は「朝食にお粥」というものでした。さて、今朝も炊き立ての白粥を前にして、今日のトッピングは何にしようかなと一思案。醤油を垂らした焼き鮭、梅ぼし、ゆかり、こんぶの佃煮、のりと山葵に・・・なんて考えていると、毎朝でも良いからお粥が食べたくなってしまうというからホント「お粥(かゆ)」の魅力とは不思議なものです。
(01年12月 copywright hiroharu motohashi)

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