店主の食卓

旦那の居場所第25回 椎茸礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


椎茸が食せるようになったのは、中学に入ってからだ。 それ以前は、なんとも苦手な食べ物の一つだった。 スライスした奴が八宝菜、野菜スープなどに入っていたら、 取り除くのに一苦労したモノだ。 何が苦手だったかといえば、1にスライスした時の見た目。 片側は黒の表皮があり、片側は無数のヒダヒダがあり、顕微鏡で覗いた 微生物の様な形をしている。 それから、あの食感。たいていは、炒め煮になっているので、 「ニョロニュル」という感じ。

胃袋の中で、あのヒダヒダが動き出し、ニョロニョロニュルニュルと 自由に身体中を駈けめぐる。そんな連想をふくらませた。 食べれるようになったキッカケは、丸のままの椎茸を焼いて がぶりと食べた時からだ。見慣れた形、歯切れよい食感、 ヒダヒダにたまったおいしいおつゆ、それからというもの、椎茸が好きで好きで堪らない。


● ● ● ●椎茸のうまさの秘密 ● ● ● ●

椎茸のうまさを一番堪能できるのは、椎茸釜飯に他ならない。 味付けした干し椎茸のスライスを山盛りにして。 炊きたての釜の蓋を取るなり、ぷーんと良いにおいが立ちこめる。 椎茸のうまさの神髄は、あの香り、そのものだ。 味蕾にまで攻め寄せて来る香気。特に香りが強いのは干し椎茸。 風味の正体はレンチオニンにという物質。「干す」ことでレンチニン酸が分解され、この成分が生成されるという。 一方、生椎茸には、この香りに加え、野生の雑木林を思わせる野趣に飛んだ風味を持っている。 あまり洗わないで使いたい。 味はというと、噛むほどに口中に広がるうま味。椎茸のうま味はグアニル酸というアミノ酸。 こんぶのうま味やかつおぶしのうま味と相まって、飛躍的にうま味が増す。

ご存知「ハイミー」という調味料は、この昆布、かつおぶし、椎茸のうま味を複合したうま味だし。 椎茸のうま味は、煮物や麺類などのだしに最適。コクと深みを増す最高の調味料だ。 甘味との相性もよく、やさしく柔らかなうま味。塩かど、酢かどを取り、隠し味に使えば 個性の強い素材や調味料の独走を鎮める調停者になる。 食感はコレ不思議。「生」と「干し」では大きく違う。 千変万化なのは「生」の食感、加熱の具合でシャッキからニョロニュルまで楽しめる。 ただし、どちらにも共通なのは、肉厚がうまい、ということ。 傘があまり開いていない、肉厚のモノを選びたい。 「生椎茸」は食感を楽しみ、「干し椎茸」は香りと深い味わいを愛でたい。


● ● ● ●干し椎茸の香りを ● ● ● ●


日本産の椎茸は春と秋が旬。しかし、原木栽培でなく、ハウスや、おがくず栽培のものは一年中手に入る。 ピンきりなのは「干し椎茸」。傘の開き具合、肉の厚さ、傘の色や亀裂の具合で価格も違う。 この違いは、栽培の環境や収穫の時期によって異なり、手塩にかけて育てた努力の結晶だ。 当家では「冬茹(どんこ)」は高くて使えないので、なるべく肉厚な「香茹(こうこ)」クラスを求めている。

肝心なのは使い方。戻す前にもう一度日光に当てる。日向臭さを取り、ビタミンDも増える。 戻しは水でゆっくりと。最低5時間。レンチオニンを抽出するまでにこの程度の時間が必要だ。 お湯で戻すと苦みが出るので水を使い、柔らかくならなければ砂糖を入れると早く戻る。 中国料理のプロはここから更に蒸していくが、家庭ではこれで充分。 綺麗に澄んだ戻し汁に鼻孔を広げて、恍惚の表情で酔いしれる旦那の姿を女将もまだ見たことがない。

■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、椎茸料理アレコレ・・ ■■■
焼きたての生の椎茸に醤油を垂らしてガブリとやった時から、椎茸好きになった。 しかし、この食べ方の欠点は椎茸の表面が乾燥する事。 そこでオリーブ油でマリネした「椎茸のオーブン焼き」 イタリアンに椎茸丸ごとのおいしさを楽しもう。


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玉葱をざくざくと粗みじん。椎茸の軸とアスパラは小口に切る。 これをオリーブオイルでマリネし塩こしょう。 椎茸の傘は水気を切り、これもオリーブオイルで表面をコーティング。 オーブン皿に椎茸を並べ傘の中に詰め物のマリネを乗せる。 後はオーブンで焼くだけ。余熱済みなら、250度で8分程度。 好みで焼きたての傘にバルサミコを垂らしても良い。


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干し椎茸の煮物は本当に美味しい。 汁気を切って、てんぷらにすると、とてつもなく、うまい。 余りのお節でも良いが、わざわざ作るだけの価値がある。 秋の行楽弁当の顔ぶれには最高の「煮付け椎茸のてんぷら」


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干し椎茸を水で戻して5時間、戻し汁を加えながら、酒、みりん、醤油、砂糖で煮付ける。 汁気を切って、てんぷらにする。当然だが天つゆなどなくて良い。パン粉を付けてフライも良いし、片栗粉をまぶして唐揚げでも良い。


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一口大に切ったうまい素材のオンパレード。 味の決め手は我らが「干し椎茸」。 ワインに良し。お酒に良し。紹興酒にも良し。 冷めてもうまいので、オードブルにも良し。 前の日に作って冷たいまま食べて良し。 良い良いずくめの「牛肉と椎茸のうま煮」

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干し椎茸を戻して扇形に1/4カット。これと同じくの三角大で大根・牛肉をカット。 牛肉はバラ(こってり派)かもも(あっさり派)。ごぼうはやや小さめの乱切り。 牛肉は酒、塩、胡椒でよく揉んで片栗粉をまぶす。 たっぷりの油で牛肉、ごぼう、大根、しいたけを炒め、酒、みりん、戻し汁で煮込む。 砂糖、醤油で味を調えながら、柔らかくなったら出来上がり。 仕上げにオイスターソースやごま油を垂らしても良い。 汁気がなくなるまで、煮詰めると味がしみ込み、照りが出る。



旦那の居場所、今回は「椎茸(しいたけ)」のおいしさについてでした。 椎茸は免疫機能を強くするレンチナンという多糖類を含んだ食品。 旦那は以前、椎茸からこの制癌剤を作る医薬工場に勤務していたことがある。 何トンもの椎茸から取れるレンチナンはごくごく微量。前処理工場では昼夜、椎茸の香りがしていた。

また、エリタデニンという物質がコレステロールを下げることも知られており、食物繊維、ビタミンDも豊富。 と来れば、この椎茸というキノコ、おいしいだけでなく、実は有り難いキノコなのです。 干し椎茸といえば中国料理。乾物同士、あわびやふかひれ、なまこ等との相性も抜群。 しかし、どんなに高級な素材と一緒に使っても、もしかしたら、これは、椎茸料理じゃないかなって思えるくらい、主役のうまさを引き立てつつ、主役を圧倒する程 「うまい!」というからほんと椎茸の魅力とは不思議なものです。
(2000年9月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第28回 納豆礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


最も愛する食材、それは納豆をおいて他にない。 小学生の頃、毎朝納豆をおかずにごはんを食べた。たまさか納豆の無かった日には、 親友に決まって「今日納豆食べてこなかったでしょう?」と指摘を受けた。 彼に言わせると、納豆を食べない日は、朝の表情が違うと言う。 最近では、納豆も、臭いや味のマイルドなものが増えている。スーパーの店頭では なかなかに満足いくものが手に入らす、母の実家「水戸」からケースで取り寄せている。


● ● ● ●納豆のうまさの秘密 ● ● ● ●


納豆のうまさは、あのネバネバにある。混ぜ方がすべてを決する。手に合うサイズの安定感のある鉢に入れたら、 箸でひたすらにかき混ぜる。混ぜれば混ぜるほど、糸が出る。この糸、混ぜる事に細く、短く、数が増す。 だんだん固くなり、持ちにくい容器では力負けしそうになる。醤油や芥子は混ぜながら少しずつ入れる。 糸はやがてネバに姿を変え、あの独特の風味が倍加する。 こうして、申し分のない納豆ができあがる。

好みでいろいろなモノを加える時も、まずはここまで混ぜることが大事。 豆の大きさ、固さ、豆そのもの味や、発酵による臭いや味の強さなど、納豆の味を決める要素は単純ではあるものの、 「これぞ」と思うものを探し当てるには時間がかかる。夏は発酵が早いので、食べるタイミングには冬より気を使う。 故に印象として「納豆」は冬の食べ物。もちろん、ちょっと発酵し過ぎのものも、風味が増してまた良いもの。

原料の大豆からは想像もできない程、うま味に富み、風味に豊かな納豆。これもすべては納豆菌さんのおかげです。 ああ、本当にうまいかな、納豆。

● ● ● ●納豆の持つ郷愁 ● ● ● ●


中学時代の学習塾の恩師から、子供の頃納豆売りをして家計を助けていた話を聞かされた。 北海道の貧しい炭坑で生まれた人だった。「秘密のアッコちゃん」のエンディングの曲にも、「納豆売り」 が登場するが、文京区に生まれ育った私にとっては、この「納豆売り」だけは未だ遭遇したことがない。 戦後間もない北国の寒い冬の朝、少年が納豆を売り歩く姿に思いを馳せると、素朴な納豆の味にもなにやら郷愁を感じてしまう。
 

■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、納豆料理アレコレ・・ ■■■


納豆はやはりご飯との相性抜群。そのまま温かいご飯にかけるも良し。 お茶漬けや雑炊もおいしい、炒飯に入れれば、より風味が引き立ち食欲をそそる。 ご飯の上に納豆を載せ、ドライカレー(カレー礼賛参照)の様に具の小さいカレーをかける。 生卵をぽんと入れて、かきまぜながら食べれば、あまりのうまさに悶絶してしまう。 飲んだ後の締めには、納豆のうま味で楽しむ「納豆雑炊」をお勧めしたい。
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鍋にお湯を沸かし、ご飯を入れ、丁寧に炊いていく。 味付けは、酒、みりんが少量に、ほんだしがベース。塩で味を調える。 具はシンプルに。ねぎの小口切りがベスト。 基本に忠実に丁寧に混ぜた納豆を半量入れて、味と風味をつけていく。 火を止める間際に食感のための残り半量の納豆を入れて完成。


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彩りと食感の変化を楽しみながら、酒の肴に楽しむ納豆。 は料理をおいしくするの基本の5色。 納豆のネバの主成分ナットウキナーゼは、血栓を溶かすパワーを持った酵素。 寝ている間に出来やすい血栓。朝より夕に食べるのが効果的。 「納豆食べたから」を理由に、お銚子もう一本飲んじゃおう。 箸休めにならない程うまい「五色納豆」。ねばってもお箸は舐めないでね。


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材料はずべて小さな賽の目。納豆の粒より小さめに切る。 赤は、まぐろの造り。白は大根、蕪の漬け物やイカの造り。 黄はたくあんや瓜の古漬け等。黒は焼き海苔、緑は胡瓜やオクラ等。 大根や胡瓜は生でなく漬け物を使うこと。 よく混ぜた納豆の上に五色のトッピング。よく混ぜて食べる。

旦那の居場所第24回 カレ-礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています

カレーにまつわる思い出は枚挙に暇がない。20歳の時、シンガポールで 覗いたカレー店では頭にターバンを巻いた人が、器用に指でカレーを食べていた。 熱くないのだろうか?それにしても、見事な指使いに感動したものだ。 5歳の時には、大塚のボンカレーが登場した。赤い箱の甘口と黄色い箱の辛口。 どちらも松山容子さんがにっこり微笑むパッケージが印象的。

初めてキャンプに行って、野外で ボイルして食った時の涙もののうまさは忘れられない。 会社入社当時の23歳の時、「COCO壱番屋」の1300gカレーに挑戦した。 失敗したら先輩のおごり。意地になって見事完食したものの、脂汗がしたたり、そのまま動けなくなり、 車の後部座席に転がされて独身寮まで辿りついた。胃袋の中身が胃袋を押して 引き攣れた様にキューキュー痛む。中のカレーライスに押されて、自分の胃袋の形が はっきりわかったのには、閉口したものだ。

● ● ● ●カレーうまさの秘密 ● ● ● ●

二日酔いが抜け切らない昼飯は、必ずといって良い程、カレーライスを食べる。 香りを嗅ぐと不思議と二日酔いのムカムカを忘れ、胃袋がむくむくと働きだすのを感じる。 料理として完成されたメニューのなかで、最も食欲増進、消化促進効果のある食べ物だ。 だから、こんな時のために後でゲップの出ないおいしいカレー屋さんを探しておくことが必須になる。

たまねぎやにんじん、リンゴの甘味とコク、スパイスののぼり立つ香気、肉から出るうま味、食欲をそそる黄色 辛さ故により感じる熱々の温度。これらが渾然一体となって、五感に攻め寄せてくる。 そして、食べ終わった後の満足感と清涼感。辛いものへの反応として、発汗が促され、結果として、汗腺からの 放熱が始まり、体の温度が下がっていく。唐辛子に含まれる「カプサイシン」がダイエットに効果が あるとして俄然脚光を浴びたりもしている。猛暑の8月、「カレーの季節」は今なのだ。 目で、鼻で、舌で、そして、食道で、胃袋で、肌で、身体全体で楽しむ。ああ、うまいかな、カレー。


● ● ● ●新宿中村屋のカリー ● ● ● ●


カレーの老舗といえば新宿中村屋が筆頭に挙げられる。 お店の味もさることながら、業務用に作っているカレーのレベルも極めて高い。 スパイスの特徴を知り抜き、最大にその効果を発揮させる。 大量調理にも、冷凍保存にも耐えられるスパイスの香り高きインドカリー。 まさにカレーを知り尽くしたカレーのプロが作るカレーといえる。 中村屋は、欧風カレーではない、インド本来のカリーを作り始めた先駆けだ。

第一次世界大戦中、日本に亡命したインドの独立運動家ラス・ビハリ・ボース氏を 中村屋主人相馬愛蔵氏がかくまったことが中村屋に本格インドカリーをもたらした。 志と志が国を越え、人の愛となって育んできた、スパイスリッチなカリー。 75年を越える長きに渡り、多くの人に愛され続けてきた奥の深さを思い知る。 当然、中村屋に行けば、今でもインドカリーの味が楽しめる。2階では1300円、3階では2300円。 費用対満足度で言えば2階で充分だ。一口食べた瞬間に「うん。これこれ。」と喜色満面。

カレーとひとくちに言っても、様々な特徴がある。 小麦粉でトロミをつけた、コクが命のイギリス式。冷めて残ったローストビーフの再利用法として生まれたに違いないリッチなカレー。 レモングラスやココナッツミルクの香り高いタイ式、インドネシア式等。 インド式にも北部と南部では、トロミやスパイスの使い方、具材に大きな違いがある。

具の違いは、宗教や信仰の違いでも大きい。マトン、豚肉、鶏肉、牛肉、野菜と多くのバリエーションが派生する。 食べれば食べるほど、奥の深さを知るカレー。蕎麦屋のカレーも捨てがたい日本式カレーの代表だ。

■■■ ・・家庭でもほんとにおいしい、カレ-アレコレ・・ ■■■


「本格派のドライカレー」 日本郵船が元祖と信じるウエットで気品高いドライカレー。 今でもレストランで、はたまた、ボイリングパックで、その最高の味を楽しめる。 じっくり煮込んだうま味に富んだ逸品をライスにかけて、フライドオニオンを散らせば、 気分はもう豪華客船、ここは、欧州航路かハワイ航路か。いずれにしても 食を楽しむ人生航路で、一度ははまる最上のスパイス料理に他ならない、 お手本を舌に描きながら行き着いた、オリジナルな「本格派のドライカレー」
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みじん切りのたまねぎ、にんじん、しょうが、細かく潰したにんにくをじっくり炒める。 合い挽きひき肉はボールに空けて、30分程度、ひたひたの水に浸ける。(かなり大胆なことなので、最初は恐い) 水が血や汚れで濁ったら替える。その後、ザルにあけて水を切る。(煮込んだ時出るアクの正体は血や汚れだ)
炒めた野菜に、ひき肉、カレー粉、基本のスパイスをいれて、さらによく炒める。(子供用はカレー粉を入れる前に 別鍋に分け、市販の甘口ルーで味付け)
水(または固形のフォンドヴォー(市販)を溶いたお湯で煮込んでいく。 汁気が飛んだら、また足して。食べる前にも、基本のスパイスで香りを入れて10分程度煮込む。 チャツネの代わりに、マーマレードやジャムを入れてもコクが出て、一層深い味わいになる。
バターライスやサフランライスも良いが、普通のライスで充分。 隠し味に、市販のルーひとかけら、少量の砂糖、蜂蜜、フリーズドライのコーヒー等を入れるも良し。 基本のスパイス=ターメリック、カルダモン、コリアンダー、クミン(シナモンの風味もGOODだ)


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「簡単便利な即席タイ風カレー」 即席のカレーでこんなに本格的でうまいカレーがあったとは。 タイレストランで火を噴きながら食べる、あのカレーが簡単に家で作れる。 ごはんでも、パンでも合う。ビールがススム夏の一押しカレー。

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鶏肉、なすをサラダ油で炒めて、このカレーの素を投入、お水で調節。 かならず、ココナッツミルクを入れて、ココナッツの脂肪に、スパイスの香りと色を溶け出させる。 15分も煮込めばOK。


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カレーには福神漬けが欠かせない。でも、これにも、ピンきりあり。 で、やはり自分で作ることにした。手作りの強みで野菜を大きくカット。 がりがりバリバリ、ワイルドに食べたい「手作りの大福神漬け」
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大根、蕪、蓮根、なす。材料は乱切り。大きめで。 なす、蓮根はアク抜き。蓮根はさっと塩水で湯がく。 その他は塩もみして、水気を切る。 煮沸した保存容器を酢で洗い、具材を投入。さっと酢を回しかける。 タレに漬け込み、漬かるのをそっと待つ。1週間くらいからが食べ頃かな。 タレ=酒、みりんを火にかけ、アルコールをざっと飛ばして、砂糖、濃口醤油を入れる。



旦那の居場所、今回は「カレー」のおいしさについてでした。 あまりにも、奥が深く、幅のある料理の礼讃だから、いずれは第2弾を書かなければ この料理の魅力は語り尽くせないと思います。 小学生の頃、遊びに熱中し、暗くなるまで遊んでいた時分。 どこからともなく、ぷーんとカレーのいい臭いが漂ってくると、 急に腹が減ってきて、友達が一斉に顔を見合わせ「そろそろ帰ろうか」と、家路に就いた。 今でも、夕方に住宅街などを歩いていて、このカレーの臭いに出くわすと なんだか子供達の大はしゃぎする、家庭の団欒の情景が思い浮かんできて、 もしかしたら、今日はうちもカレーかな、なんて思わず期待してしまったりするというのだから 本当にカレーの魅力とは不思議なものです。
(2000年8月 copywright hiroharu motohashi)

旦那の居場所第48回 自家製調味料」礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています

我が家の冷蔵庫を開けると保存瓶に入ったいろいろなペーストや液体が並んでいる・・・、これが自家製調味料。こいつがあると臨機応変に料理に使えるため味付けに幅が出る。どの料理にどの自家製調味料を使うかはインスピレーション次第だ。基本の組合せは醤油などの基礎調味料+アクセントになる野菜や香辛料。調味料としてだけではなく漬け込んだ野菜そのものがつまみになったりもする。今回はあると便利ないろいろな自家製調味料について礼賛したい。
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■■■ ・・「自家製調味料」あれこれ・・ ■■■

● ● ●まずは、”にんにく”で● ● ●
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まずは「にんにく」、これを醤油やオリーブオイルで漬け込む。にんにくの風味が醤油や油に移り最高の調味液になる。にんにくも臭みが取れるので刻んで料理に入れたり、そのままかじってもホントに美味しい。にんにくには味がしみ込み柔らかくなっているので炒め物や鍋物、煮物に入れても短時間で火が通る。醤油漬けは豚肉の炒め物、オリーブオイル漬けはパスタなどに合う。

● ● ●”しょうが”で楽しむ常備菜調味料 ● ● ●

ひね生姜は生のままスライスし、これで「醤油漬け」と「ハチミツ漬け」を作る。醤油漬けは炒め物や生臭い料理の隠し味に重宝、もちろん生のままで酒のつまみに最高だ、はちみつ漬けはヨーグルトにかけるが、生の肉にもみ込めばハチミツ風味のローストが味わえる。しょうががたくさん手に入るとみりん、酒、しょうゆで佃煮を作る。これだけでご飯がすすむ。刻んでご飯に混ぜておにぎりにすると乙な味になる。新しょうががある時は自家製ガリを仕込む、ガリは刻んで和洋中いろいろな料理に使える。我が家ではあっという間になくなってしまうので各種”しょうが”系調味料は一番回転が早い。

● ● ●”唐辛子”系調味料のバリエーション● ● ●

生の唐辛子は刻んで醤油漬け、丸のままピクルスにしておく。料理やサラダ、野菜のマリネなどにちょっとしたアクセントになる。沖縄や東南アジアに行くと小粒の赤唐辛子の水煮や酢漬けがあるのでこれは必ずお土産にする。このままでも良いが中国山椒(花山椒)、ごま油、砂糖を混ぜペースト状にするとパンチの効いた「食べるラー油」系の醤(ジャン)になる。山椒を多めにすると、まさに「麻辣醤(マーラージャン)」、しびれるような辛さは病みつきになる。

● ● ●”梅”の深い酸味で料理にコクを● ● ●

梅はなんと言っても便利な調味料、梅干しを刻んで和えるだけでいろいろな素材がおいしくなる。中でもお薦めはクリームチーズ、種を抜いた梅干しを混ぜるだけで抜群のワインのつまみになる。”梅酒”や”梅酢”も重宝な調味料、砂糖少なめ、梅酒は梅1kgに対して焼酎一升、氷砂糖400g。梅ビネガーは梅1kgに対してりんご酢1リットル、氷砂糖300g。小さい容器に移しておくとちょこちょこ使えて便利。もちろんどちらも飲料で楽しめる。梅ビネガーのオンザロックは寝酒の代わりに飲むと何故か寝つきが良い。

● ● ●”らっきょう”漬けは万能調味料」● ● ●

「むきラッキョウ」が出回ると自家製の調味液に漬け込み「らっきょう漬け」にする。湯に砂糖、塩を入れて溶かし、赤唐辛子を入れたら火を止め、少々冷めたらりんご酢を混ぜ、これにらっきょうを漬ける。2~3日から食べられる。らきょうはそのまま食べても良し、刻んでカレーや炒め物に入れたり、汁はドレッシングやパスタソースの隠し味としても便利だ。



ジャムや佃煮などの空き瓶は我が家では絶対捨てない大事なキッチンウエア、いろいろな自家製調味料を作るための常備品です。「ご飯のおかずが足りないなあ」とか、「酒のつまみが何かないかなあ」という時に、冷蔵庫にストックしているこうした自家製調味料群の中から、しょうが、にんにく、唐辛子、梅などなどが応援にかけつけてくれます。もちろん、そのままでも、豆腐やチーズに合わせたり日本酒にもワインにも合うつまみになります。

そういえば昨年まで暮らしていたフィリピンにも、「サウサワン」=卓上で自分で調合するオリジナル調味料、という食習慣があって、小皿に醤油やココナッツ酢、カラマンシ、ラブヨ(小粒の猛烈に辛い唐辛子)などを小皿に入れてフォークでつぶしておかずに合う調味料を作ります。ホントに調味料の魅力とは不思議なものです。

2010年8月 本橋 弘治 copyright by Hiroharu Motohashi

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旦那の居場所第47回 「にら」礼賛

「にらレバ」炒めといえばスタミナ料理の代表選手、精力増強・疲労回復には欠かせない。学生時代にはこれで大盛りご飯を平らげた。にらと言えばあの食感がたまらない。茹でても、炒めても、口の中で噛むごとにバリバリと音を立てるから、その音だけで豪快な感じがしてしまい、いかにもスタミナがみなぎってくるような錯覚に囚われる。中でも最高の食感を誇るのが根もとの太くなった色の薄い部分、ここだけを炒め物にしてバリバリと食べるのが、いつかは叶えたい、僕のささやかな夢でもある。

それにしても、この野菜、醤油、みそ、しょうが、にんにく、コショウ、からし、バター、ポン酢しょうゆ・・何故かありとあらゆる調味料や香辛料との相性が抜群だから侮れない。一年中、手に入るが、この時期のにらは、みずみずしくて、しなやかで、とりわけ食欲をそそる。


● ● ● ● にら、黄にら、花にら ● ● ● ●

岡山に住んでいた頃は黄にらをよく食べた。黄にらは岡山の特産だ。日光を当てず軟白栽培したものだから、柔らかくて甘みが強い。東京で買ったらひと束300円もする高級食材、あの超高級店「ざくろ」のしゃぶしゃぶには、いつも必ずこの黄にらが入っているのを思い出す。岡山では、やわらかい白魚と一緒にこの黄にらを卵とじにして堪能した。

花にらはやはり中国料理の定番食材、やわらかい花茎とつぼみがおいしい。にらより臭みがなくマイルド、歯触りと甘みを楽しむ。にらが手に入りにくかったマニラでは、時々この花にらで代用したが、ここのはワイルドに栽培されたものなのか、すさまじく硬かった。にらは鍋にも不可欠の素材、きゃべつとニラ、にんにくと鷹の爪をたっぷり入れたモツ鍋を最初に食べた時の感動は忘れない。


● ● ● ● にらのおいしさ、にらの効能 ● ● ● ●

にらのおいしさは、1に香り、2にシャキシャキ感、3にうま味。炒め物でも鍋物でも、にらが入るだけで風味が格段に向上する。この香りのもとは硫化アリル、ビタミンB1の吸収を高め糖の分解を促進するので、豚肉と一緒に食べるとビタミンの吸収効率が高まるという、まさに「レバにら」の組合せは科学的にも合理的な根拠があるわけだ。抗酸化作用もあり、血行を良くして身体を温め胃腸の働きを助けるので漢方薬としても使われる。滋養強壮には欠かせない、まさに元気になりたい時の必須野菜と呼びたい。

■■■ ・・ホントにうまい にら料理あれこれ・・ ■■■

「ニラと切り干し大根のキムチ」
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生でバリバリ食べるニラの食感はまた格別だ。切り干し大根も同様、煮つけても良いが、水で戻したものをバリバリとサラダで食べるのは実にうまい。この「生食抜群食感2兄弟」をキムチにしてもりもり食べようというこの料理、ビールがススムこと請け合いの前菜。

ニラは4等分にざく切り、切り干し大根は水で戻して水気を切る。保存容器に大根、ニラ、乾燥桜えび、市販のキムチの素の順に重ねていく。これを3~4層、積み上げれば完成。あとは冷蔵庫で2-3日したら食べ頃。

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「にらのじゃがいもジョン」
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韓国には「ジョン」とか「チヂミ」とか呼ばれる大そう美味い料理あり。チヂミ
は小麦粉を使う地方の庶民料理、ジョンは上新粉を使う宮廷料理などという説も あるものの、日本人の私にとっては同じ料理のようにしか思えない。しかるに、 カムジャジョンというじゃがいもをベースしたジョンは、なるほどこれは普通の チヂミとは異なる食感が最高。この「にらのじゃがいもジョン」、まさにこのカ ムジャジョンの応用です。

ニラは3等分程度に大き目にざく切り、じゃがいもとやまいもは同量を生のまますり卸して、ほんだしと一緒に混ぜる。ホットプレートに薄く油をひき、にらを載せたらすぐに生地をかけて両面をこんがりやく。しょうゆやポン酢であっさりと頂きます。


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「にら玉丼」
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ニラの卵とじ、ニラとたまごの味噌汁など、にらと玉子の組合せは本当においしい。これにビタミンB1の豚肉を組合せ、スタミナ抜群、それでいて、あっさりの丼。梅雨の季節の体力回復、風邪の予防にどうぞ。

ニラは3センチ程度にざく切り、鍋にめんつゆを熱して豚バラのスライスを茹で、にらを入れたらすぐに玉子をほぐしかけて火を止め、あとは余熱で半熟トロトロになったらご飯にかける。ベジタリアンなら豚肉のかわりに油あげを使ってもおいしい。




今回はにらのおいしさについてでした。 にらは英語でChinese chive、中国では紀元前から栽培されていたという。日本でも中国料理の普及とともに一般に広まった。カロチン、ビタミンB1・B2・C、カルシウム、カリウムに富む。良いことずくめのこの野菜、その割には2束100円、3束100円など、もやし並の値段で手に入る。

にんにく同様、食べた後の臭いを気にする方もいるけど、加熱の方法によっては臭いもうまく対処できる。餃子やニラ饅頭など点心にも欠かせない素材、最近はニラ入り、ニラ抜きを選べる餃子屋さんもあるが、ニラ抜きを頼んだら、なんだかもの凄く損した気分になってしまうというから、ホントににらの魅力とは不思議なものです。

2010年5月 本橋 弘治 copyright by Hiroharu Motohashi
参考文献:食材図典(小学館)、もっとからだにおいしい野菜の便利帳(高橋書店)

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