旦那の居場所第40回 「おくら(秋葵)」礼賛
女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています
オクラの原産地はアフリカ。ここではトマトベースのシチューにオクラを入れて食べる。今年5月のアフリカ出張では、ウエットマーケット(市場)に山積みされたオクラに遭遇。日本で食べるオクラより短く、太さはほぼ2倍以上、ずんぐりむっくりのオクラは、かの地では極めてポピュラーな野菜。日本に渡来したのは幕末だが、小学校の頃(30年程前)からよく見かけるようになったと思う。
独特の形や香りから、喰わず嫌いの御仁も多いが、丸ごとかじりつく、オクラのうまさといったら言葉にできない。
さて、旦那の居場所、今回は「オクラ(秋葵)」を礼賛したい。
ナイジェリア、ラゴスのウエットマーケット「Miles12」(12マイル市場)でオクラを売る人
(現地の人の暮らしを支えるこのマーケットに立ち寄る日本人は、旦那の勤める会社=「味の素㈱」の現地駐在員くらいしかいない)
PhotoBy HiroharuMotohashi May,2002
● ● ● ● オクラうまさの秘密 ● ● ● ●
オクラはあの独特のネバネバがうまい。混ぜるほどにねばりが増す。和え物に良し。酢の物に良し。汁物にすれば、このネバネバのおかげで、ぬめりのある汁になる。夏の暑い夕方に、このぬめりのある冷たい酢の物なんかで、キューッとビールを飲んだら最高だ。活動の鈍った胃袋に、ネバネバが活力を与えてくれる。醤油、酢、味噌との相性も良く、また、かつおぶしや「味の素」のうま味でエグ味は消える。山芋、ジュンサイや納豆など、他のネバネバ系の食材と合わせると、うまさが倍加する。しょうが、トマト、なす、きゅうり、みょうが等、夏向きの野菜との組み合わせも抜群だ。
● ● ● ● オクラのうまい食べ方 ● ● ● ●
6歳の娘はオクラ好き。さっとボイルしたオクラを丸ごとマヨネーズをつけてバリバリ食べている。一本丸ごとバリバリ方式なら、一夜漬けやマリネ、ピクルスにしてもうまいし、ぬか漬けもいい。食感を残して丸ごとカラッと揚げた天ぷらも最高だ。煮込みなら、ぶつ切りにして、ナスやトマトと一緒にオクラカレーもおいしい。何よりシンプルなのは朝ご飯。小口に切ったオクラに醤油を入れてよくかき混ぜ、かつおぶしや「ほんだし」で味付け。炊き立てのアツアツご飯にかければ、ネバネバと一緒に、ご飯一膳があっという間に胃袋に落ちていく。種子は舌に残るし、苦味があるので、日本料理では取り除かれることが多い。家庭では気にせず、ぷつぷつ食べてしまいたいが、あの苦味が苦手という人は、種を除いてお試しあれ。
■■■ ・・ホントにうまいおくら料理あれこれ・・ ■■■
夏を涼やかに過ごすためは、食べ物の工夫が欠かせない。きりリと冷やした稲庭うどんをネバネバのオクラつゆにつけて食べる。「浴衣の君はすすきのかんざし~」なんて、拓郎を思わず口ずさんでしまう。風流な「稲庭うどんオクラつゆ」
オクラを小口からスライス。市販のめんつゆを鍋で温めオクラを茹でる。そのまま冷やせば、ネバネバのめんつゆの出来上がり。薬味はみょうが、しょうがを必需として、後は好みで。乾麺の稲庭は程よく茹でて冷水できりり冷やして。
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オクラのバター炒めは予想以上にうまいもの。ぴりりと胡椒を利かせて。「オクラの黒胡椒バター炒め」
オクラは斜めに小口きり。器に取りネバリがでるまでかき混ぜる。醤油と「ほんだし」で味付け。鍋にサラダ油を熱し、オクラをさっと炒め、黒胡椒をふる。最後にバターで風味をつける。
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原産地に極めて近い食べ方。トマトベースの味付けでオクラを煮て食べる。夏向きに上品な。加熱時間は1分程度、夏にはうってつけの簡単メニュー。「オクラのトマトスープ」
オクラは刻んでかき混ぜる。鍋に「クノールカップスープ 完熟トマトのポタージュ」を入れて分量のお湯で溶く。これに刻みオクラを入れて1分間程茹でて、器に取り、冷蔵庫でよく冷やす。スープとして飲んでも良いが、細いロングパスタに絡めて、冷たいスパゲティーにしても良い。ご飯にかけても、意外とおいしい。
旦那の居場所、今回は「オクラ(秋葵)」のおいしさについてでした。花が終わると、残されたガクが伸び始め、すくっと天を目指して、あっと言う間に成長するオクラ。 オクラのひょろりという尻尾は、実は天に向かって伸びるオクラの命の先端なのでした。
カルシウム、鉄、カロチン、ビタミンCを多く含むこの野菜、やはり夏にたくさん食べたい野菜の代表です。 咽喉越し最高の冷たい茶碗蒸、具は何かなとドキドキしながら、食べ進むにつれ、五稜の形の緑のオクラが出てきただけで、すーっと涼やかな気持ちにさせてくれるというから、ほんと「オクラ」の魅力とは不思議なものです。
(02年7月 copywright hiroharu motohashi)