2012年2月の記事

旦那の居場所第14回 豆腐礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています


子供時代、一番嫌いな「おつかい」は、豆腐だった。 理由の1つは、店頭にものがないこと。「絹ごし」、「油揚げ」キチンと 名前を言えないと買えない。指差し発注のできない唯一の店だった。 理由の2つは、独特の店の雰囲気だ。店内はいつも濡れている。大豆の蒸れる臭い。 油のにおい。時々バーナーで豆腐に焼き目をつけている凄まじい光景に 出会う時だってある。 理由の3つは、包装のいい加減さ。水の中で、プラ容器に豆腐をすくいとり 紙をのせて、ビニールかなんかでくるんで渡される。 うっかりすると、家に着くまでに下半身が水浸し。 商店街が消え行く中で、思えば真っ先に、「豆腐やさん」が減っていった。


● ● ● ● 「豆腐美味いかな」 ● ● ● ●

豆腐のうまさ。 まず、温度。豆腐の熱への順応性と保温力は素晴らしい。 氷の様な冷たさ、室温の表情の豊かさ、食道で感じるアツアツ。全温度帯対応のうまさ。 次に食感、絹ごしのやさしさ、木綿の力強さ、ボロっ崩れたり、サッと溶けたり、しばらく舌の 上で味わっていると、口から鼻へ独特の香りが伝わってくる。 味はといえば、ぱっと真っ先に感じる甘さ、次にエグ味か苦味か。最後は、また奥深いコクのある甘さ。 独特のエグ味故に、大豆そのものは、そう一度にたくさん食べられない。 故に、大豆は主食になれない運命に生まれた。しかも、種子が固くそのままではおいしくない。 だから、長い年月をかけて工夫され、おいしく栄養価の高い食品として発達したのが、豆腐なのだと思う。

 

● ● ● ● 「豆腐百珍」 ● ● ● ●

旦那の生家の界隈では、「五右衛門」「細雪」など、豆腐料理の老舗がある。 我が国には「豆腐百珍」なるロングセラーもあり、豆腐のおいしい食べ方は無数にある。 しかし、不思議なもので、豆腐の好きな食べ方はと聞かれたら、 1に奴、2に湯豆腐、それ以降は「う~ん?」となってしまう。 理由は、やはり、豆腐本来の、香り、食感、味が楽しめるからだろう。 蝉の声を聞きながら、縁側で食べる「冷奴」。 真夏でも何故か日本酒で、「冷奴」がたまらない。 鮮度の良い醤油と少しのひねしょうがが相性だ。 わさびや七味、柚子胡椒、しその実や、山葵のかす漬けなども良い。 もちろん、何もつけずに、何も添えずに。もうまい。 「冷奴」を凌ぐ豆腐のうまい食べ方はない。


■■■家庭でもほんとにおいしい、豆腐アレコレ ■■■
自家製のドレッシングをさっとかけて。 豆腐を夏野菜と夏薬味で食べる。 ざっと簡単に作るのも良いが、少し手間をかけると、 抜群にうまい。よく冷やした白ワインとの相性は抜群。 「豆腐と夏野菜のサラダ」
 


touhu02.jpg「豆腐と夏野菜のサラダ」


茄子は皮をむき、色止めしながら茹でる。スナックえんどうや胡瓜、 アスパラ、たまねぎなども、食感を活かしてさっとボイル。 それらを薄めの出汁につけて冷やす。 豆腐は好みの大きさに切り、味噌を塗って冷蔵庫で冷やす。 食べる直前に豆腐の味噌を出汁でサッと洗って盛り付け。 よく冷やした完熟トマトを添え、みょうが、青しそ、刻みのりなど散らす。 ドレッシングは、しょうが、にんにく、玉ねぎ、みょうが、青しそ、 バジルの葉、塩、胡椒、からし、酢、グレープシードオイルをプロセッサーで攪拌。

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冷酒にあう「夏の豆腐のつまみ2品」。 加熱は不要。しかし、冷蔵庫で2~3日かかる。 チーズというかなんというか、でもどこかで食べたことがある様な・・。 遠く中国まで旅して、豆腐のルーツを訪ねたら、こんな2品があるに違いない。 休日は朝から、「今日こそは」と待ちわびる乙なつまみ。

touhu03.jpg「夏の豆腐のつまみ2品」

どちらの料理も少し甘味のある上等な「絹ごし」を使いたい。 豆腐は賽の目に切り、器に入れ、さっと振り塩。 グレープシードオイルで漬け込み、バジルを散らし冷蔵庫で。 2日目くらいから食べる。チーズのオイル漬けの様でもあるが、もう少し爽やか。

お次は、豆腐を一口大に切り、好みの味噌にすっぽり漬け込む。 ラップに味噌を塗り、豆腐を置き風呂敷き包みが便利。 3日~1週間位楽しめる。熟成が進むにつれ、表情が変わる。 使命を果たした味噌も味噌汁で無駄無く使える。

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赤坂 四川飯店の名人に、陳麻婆豆腐の作り方を伝授して 頂いたことがある。 調味料の使いこなし、加熱の仕方、油の隠し技。 中国料理が、科学的で、システマチックな料理で あることを、改めて実感する。 それをベースに家庭でも簡単に出来る「四川麻婆豆腐」 これをやる時はいつもより多めにビールを冷やしておく。 アツアツのご飯にかければ、夏バテは消え失せる。 「麻」とは舌がしびれる辛さのこと。中国山椒の辛さで新陳代謝は活発に。


touhu04.jpg「四川麻婆豆腐」

弱火でにんにく、ねぎのみじん切り、豚挽肉を油が透き通るまでよく炒める。 甜麺醤で味付け、別皿にとっておく。(これだけでもメシが2~3杯はペロッと食べれる。) 絹ごしは1cmの角切り、別鍋に湯を沸かし、塩少々で茹でる。 中華鍋に、油、豆板醤を入れ、香りを引き出し、合わせ調味料、炒めた挽肉、 水を切ったボイル豆腐、ねぎを入れて、強火で煮る。水溶き片栗粉で トロミをつけ、最後に鍋肌から、保温と香りのためのごま油をまわしかける。 好みで中国山椒をたっぷりかける。 (合わせ調味料)刻み豆鼓または豆鼓醤、甜麺醤、醤油、紹興酒、ガラスープ、好みで砂糖 (子供向け)豆板醤、豆鼓、中国山椒は使わず、合わせ調味料にトマト1個分を入れる。


旦那の居場所、今回は「夏の豆腐」のおいしさについてでした。 「豆腐」と「納豆」という漢字は、あべこべではないか?以前から思っている疑問。 「キリギリス」「こおろぎ」がいつの間にか入れ替わった様な具合で。 納豆は見た目も匂いも、いかにも「豆が腐っった」という感じ。一方、あの豆腐の品良さ、乳白色の瑞々しさ。 正に「豆を納める」というにふさわしい。 これと同じようなことを、最近、渡辺淳一氏がエッセイの中で書いていたのを読んだので、 同じようなことを感じている方は多いのではないか。 「瀬を早み岩にせかるる滝川の われても末にあはむとぞ思ふ」 百人一首でもお馴染みの崇徳院の歌。寒天などで固めに作った豆腐を縦長に細切りにし、滝川の流れに 見立てて、冷たい出汁を張って食べる「滝川豆腐」 たおやかで、品の良い、涼味あふれる「夏の豆腐」の逸品。 それにしても「夏の豆腐」を食べながら、まだ明るいうちから、冷酒をちびちび。 もうそれだけで、「人生最高の贅沢だ」なんて、思ってしまうからホント 「夏の豆腐」の魅力とは不思議なものです。

(99年8月 copywright hiroharu motohashi)

ふき・ふきのとう

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写真左は蕗を葉と茎に分けて、茎はだしと塩で煮て、葉は酒・醤油・みりんで煮含めたものです。実家の母がよく作っていましたが、小学生のときに蕗の茎をさっと湯がいて水にさらしたものを筋をすーっと取るお手伝いするのが好きでした。綺麗にとれるのが気持ちいいいのと、色がなんとも綺麗だったから。葉のほうはかなりあくが強いので長い時間水にさらしてから濃い目の味付けで煮ていきます。

写真右は蕗の薹と松の実を細かく刻んでオリーブオイル・酒・醤油で炒めたもの。どちらもご飯のオカズに、お酒のつまみにもなります。夫作。まだ寒いですが春を感じる匂いですね。

ガラス食器って夏のものだと思い込んでいましたが、冬でもOK

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ガラス食器って夏のものだと思い込んでいましたが、冬でもOKなんですね。チーズフォンデュとアボカドのサラダで活躍させました。 意外と和・洋・中どれでもいけそうですね。楽しみです。ガラス食器だと、下に綺麗なランチョンマットを使用すると 柄が透けてまた違った楽しみ方もできますよね。まだ素敵なランチョンマットがないので、これから揃えていきたいと思います。素敵な食器をありがとうございました。(J・Y様より)

旦那の居場所第13回 ステ-キ礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています

「今日はビフテキにでもするか!」子供の頃は、父親の一声に狂喜乱舞したものだった。 家でナイフとフォークを使う御馳走は、この「ビフテキ」以外には登場しない。 それにしても、何故か「ビフテキ」といった。牛肉に対する特別な価値観が当時の日本にはあったのだ。

外食では、高価で手の出ない料理。お買い得の肉をそれでも奮発して買ってきて、大騒ぎした。 なんでも兼用の家庭のフライパンで焼くのは至難の技。「ステーキはレアに限る」なんて 言いながら、父親はまだ中が冷たい肉を美味そうに食べていた。

● ● ● ● 「ステーキ美味いかな」 ● ● ● ●

世界で一番美味いステーキハウスをご存知か?ニューヨークはブルックリンの ピーター・ルーガー・ステーキハウスを置いて他にない。 ここのTボーンを食べたいだけで、命からがらブルックリン橋を越えたのは、3年前の春。 期待をはるかに絶するTボーンステーキのうまさに脱帽。 これはどうやって焼いたのか?オーブンは何度か?どのくらい大きいオーブンがあるのか? たどたどしい英語で質問攻めにされて、これにはベテランの 接客のプロも相当閉口していた。 USビーフは硬い、臭いが気になる、ジューシー感がない。

今までの固定観念は吹き飛んだ。 表面はカリッとクリスピー、中はジューシー、噛むほどに肉の旨味が口中に広がる。 分厚く白い器にたまった肉汁をつけながら、ヒレとサーロインをTボーンから交互に切りとって 口に運ぶ。まさに至腹?のひととき。この国の人間はこんな美味いものをいつから食っていたのか?

● ● ● ● 「ステーキのこと」 ● ● ● ●

思えばステーキという料理。極めてラジカルで原始的。肉を切り分けて焼くだけ、 料理の原点だ。家庭では肉をサーブするのは、男性の仕事。狩猟時代の名残は 今でも西洋のマナーの中に残っている。 さて、調理法。鉄板で焼く。網で焼く。または、オーブンなどでローストする。 熱源は?電気、ガス、炭火。 程よく脂を抜いて!そんなことしたらもったいない! ソースは?塩・胡椒だけ?それも片面のみ? 思えばステーキという料理。極めて繊細で、奥が深い。肉を切り分けて焼くだけ、 料理の芸術だ。 良質の蛋白質と同時にビタミンA、B1、B2の補給には最適、古人の知恵か偶然か?

★★ 家庭でもほんとにおいしい、スーテキアレコレ ★★

この道具との出会いは、自分で焼くステーキの味に革命をモタラシタ。 表面はクリスピーに、中はジューシーに。 安価になったとは言え、霜降りの柔らかそうな一枚。侮れる値段ではない。 失敗は許されないから、今夜もこれを使う。 「クリスピー・カバーで焼くクリスピーステーキ」

◆「クリスピー・カバーで焼くクリスピーステーキ」◆
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肉は好みの部位を。早めに冷蔵庫から出し室温に。 焼く直前に塩・胡椒。良く熱したフライパンに脂を引き、肉を入れすかさず クリスピーカバー。ひっくり返しは一度で決めたい。時々、焼色を見て、今しかない というタイミングでひっくり返し、またカバー。 カバーの最上部が空いているので、ここから小量の香りのための酒を注ぐ。 酒はお好みで。ウイスキー、ブランデー、白ワイン。我が家ではこの順に 登場する頻度が高い。もちろん焼き上がった時にはテーブルはすべて 準備が整っていなくてはならない。


特売の安いステーキ肉。国産、輸入を問わない。 サシの入っていない、硬い肉でも、 少しの工夫で、抜群にうまくなる。
「野菜たっぷり煮込みステーキ」


◆「野菜たっぷり煮込みステーキ」◆
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肉はこれでもかといううくらい筋を切る。 1枚につき1/4個程度のたまねぎをすり卸し、マリネしておく。 野菜は、もやし、コーン、いんげん、えのきなど。 あらかじめ、軽く油で炒めるか、茹でておく。 タレは、赤ワイン、醤油、日本酒、みりん。 フライパンに油を敷きにんにく、肉を入れ両面をやや短めに焼く。 フライパンのすき間に野菜を入れ、全体にタレをかけ、フタをして、2~3分煮込む感じで。


六岡山から車で北に2時間、勝山という町がある。 酒造りや林業、木材加工の盛んな美しい町。 旭川畔には、あの高瀬舟の発着場の跡が残る。 この町に蔵元「御前酒(ごぜんしゅ)」の経営する、和食処「西蔵」がある。 酒の貯蔵庫を改築したなんとも素敵なお店。 銀鱈の焼き物や美作牛のステーキ丼など、ここの料理はなんでもおいしい。 なによりは、食事の前にまず、「御前酒」の吟醸が出る。 ここで食べた「ステーキ丼」の味はDNAが記憶した。


◆「シンプル イズ ベスト のステーキ丼」 ◆
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長ネギ、刻みのり、タレを準備する。 タレは好みだが、酒1、みりん1を煮切り、醤油1を足して弱火で加熱。 味が馴染んだら少し寝かせる。時間が経つ程に良し。 肉の厚さは、出来れば1cm欲しい。フライパンとクリスピーカバーで 焼いて、最後に少量、上記のタレとバターの風味付け。 あつあつご飯に、のり、一口大に切った焼き立てのステーキ。 長ネギは、斜め小口に切り、水にさらし、水分を多少残してレンジで40秒。 タレは加減しながら、まんべんなく回しかけ、ネギを天盛りに。 息継ぎをせず、一気に食べちゃう方がうまい。 酒1、みりん1、醤油1のタレは、万能調味料。ステーキソースにとどまらず、 和洋中、肉魚野菜、なんでも使えちゃう、強い味方。



旦那の居場所、今回は「ステーキ」のおいしさについてでした。 西牛東豚、「神戸」に限らず、西では、どの街にも、抜群にうまい 「ステーキハウス」が無数に存在する。 岡山の「佐向吉」では、つけあわせの野菜を自家製で賄う。 家族でこの農園を訪ね、ハーブをかじりながら、収穫の楽しさを味わった。 広島の「みき」も、常に研究を怠らない店。「瀬戸のほんじお」をご愛顧頂いている。 どちらもご夫婦だけのこじんまりした店だが、料理への情熱と食材へのこだわりは凄まじい。

人類と「牛肉」とのつきあいは、かれこれ5000年くらい。 ピラミッドには人間が牛肉を食べる絵が残っているというからスゴイ。 日本では、一般に牛肉食が普及したのが、明治以降。 「牛肉」とのつきあいは、まだ始まったばかりだ。まだまだ、うまい食べ方があるに違いない。 それにしても「ステーキ」、あの歯切れの良い、弾力のある、繊維を断ち切る音と、肉汁がほとばしる音。もう、、こんな風に考えていると、早朝だろうが、深夜だろうが、無性に食べたくなって しまうというから、ホント「ステーキ」の魅力とは不思議なものです。

(99年7月 copywright hiroharu motohashi)
99/7月

旦那の居場所第12回 筍(たけのこ)礼賛

女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています

旦那の母の実家は、茨城県水戸市中心部の高台にある名刹。 裏山には孟宗の竹やぶがあり、幼い頃は、春先に訪れ筍堀りをした。 かすかな地面の盛り上がりを見付け、そっと土をどけると「ちょこん」 最後まで折らずに抜くのが一苦労、大騒ぎをしたものだ。 皮に梅干しを挟み「ちゅぱちゅぱ」やりながら、 茹で上がるのを待った。これまた、大騒ぎで熱熱のうちに皮を剥いて、姫皮をそのままむしゃむしゃ 食べる。 なんとも懐かしい子供の頃の思い出だ。


● ● ● ● 「筍のうまさの秘密」 ● ● ● ●

筍のうまさは歯応えにつきる!じっくり下茹でしても、あの繊維質の歯応えが残っているから 不思議な素材だ。口の中で猛々しい生命力が「しゃきっ」と音を立てるかのようなうまさだ。それから、独特の風味、産まれたての若々しい成長力の香り。多少「エグ味」が残っている くらいの方が、旬の筍の醍醐味というものだ。 出汁のうま味に出会うと、何故か筍の隠し持っていたおいしさが、ぱっと華開く。不思議な素材だ。 味噌やしょうゆにも良く合うし、木の芽など春の香り達との相性はもうこの世のものとは思えない。

賛否はあるが、先っぽより、根にちかい固いところが格段にうまい。 皮付きのヤツは、一刻も早く下煮してやらなくてはならない。おのれの生命力、成長力故に、 どんどん鮮度が劣化するからだ。自分の若さを持て余す。デリケートだなあ、筍。

● ● ● ● 「筍の煮物のこと」 ● ● ● ●

筍の煮物、各地方、各家庭で、「おふくろの味」があるに違いない。 関東では、やはり醤油色に仕上げる甘辛の「たけのこの煮物」 関西では、かつおの風味だけが香る淡色の「たけのこの炊いたん」 やわらかい若布とさっと煮た「若竹煮」、細かいかつお節を仕上げにまぶす「土佐煮」 ふき、わらび、ぜんまい、菜の花、うど。春野菜、山菜達と一緒に炊くのもうまい。 少し濃い目、関東風の味付けで、厚揚げなどと一緒に煮付けると、何故か花見を思い出す。

★★ホントにおいしい・・「筍」にあうあの料理★★


和風のグラタンは絶対失敗のない強い味方。具材は、ごぼうのせんぎり、レンコンなど、何でもござれ。歯応えと、味噌との相性では、筍が一段うまい。ごはんのおかずに良し、お酒のつまみに良し。手軽で、楽しい「たけのこの和風グラタン」。

◆「たけのこの和風グラタン」◆
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下茹でし、うすく出汁を含ませた筍は好みの大きさにカット、 器に盛る。味噌3、酒3、牛乳3、砂糖1を良く混ぜ、たけのこにまわしかける。好みで、味噌に、山椒の実、木の芽、わさび、マヨネーズなどを仕込んでもまた乙な味。これをオーブンまたはオーブントースターで焼く。焦げ目がつけば出来上がり。アツアツを「しゃきしゃき」いいながら食べると、たとえようのないうまさだ。水煮のパックや缶詰めでもOKだから、一年中作れる。



下茹でせず、焼いた鮮度抜群の「たけのこ」のうまさは絶品だ。堀たてなら、あるいはそのままオーブンで 焼いて縦割りにしても、うまいに違いない。市中で買ったものは、やはり一度、下茹では必要だが・・、皮付きをそのまま食べるラジカルだが繊細な味の「たけのこの姿焼き」

◆「たけのこの姿焼」 ◆
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たけのこは、皮付きのまま、下茹で。先っぽも切り落とさない。 煮えたら、縦半分に切り、表面に食べ易い様に、隠し包丁を入れ オーブンで焼く。蕗の薹味噌を塗りながら食べる。 ・・蕗の薹の味噌・・ 蕗の薹を、多めの塩を入れた、たっぷりの湯で茹で、水につけておく。 水気を絞り刻む。鍋を熱し酒、味噌、みりん、砂糖を溶かし、蕗を入れて混ぜていく。摺りゴマ、くるみなど入れてもうまいが、蕗の薹の香り第一で。



六本木の中国料理の名店「中国飯店」の名物料理に「冬たけのこの揚げ物」 があった。先日、この店の市ヶ谷の支店で食事をしたら、この料理に 出くわし涙もの。5年ぶりのあの味は健在だった。 家でやるには、缶詰めの冬笋も、手に入りにくいから、 根曲竹や淡竹(ハチク)などを使っても良い。

◆「たけのこの唐揚げ」 ◆
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えぐ味のない細いものなら生で、缶詰めの水煮なら必ず一度湯通しをしてから使う。 さっと出汁で煮てから、揚げてもよし。いきなりでもよし。 ほんのうっすら片栗粉をつけて、油で揚げる。熱熱に「アジシオ」を振って。 筍一本食べるなら、根元を煮付け、先っぽを揚げるというのがお勧め。



旦那の居場所、今回は「筍(たけのこ)」のおいしさについてでした。 見かけによらず、たんぱく質、ビタミンB1・B2、ミネラルに富み、見かけ通りに、 食物繊維が豊富。 水煮、缶詰め、青椒用の細切りの水煮パック、保存性の高い常備菜として、 いろいろな料理に使える便利な素材として、一年中食べられる人気の筍。

山形出身の先輩から頂いた自家製の月山たけのこの水煮缶詰めのうまさは今も忘れない。それにしても、この季節、皮付きのいかにも掘り立てというやつを見ると 手間がかかるのは知りながら、居ても立ってもいられずに、 ついつい買ってきてしまうというから、 本当、旬の魅力とは不思議なものです。 (99年5月 copywright hiroharu motohashi)

99/5月

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