旦那の居場所第20回 旅礼賛・京都編
女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています
女将の仕入れと講演に同道する久方ぶりの京都の旅、旦那の目的は「うまいもの」。 2月の土、日、月。21日の弘法さん(東寺)の市に合わせた旅。 「一見さんお断り」、京都にはどこか、よそ者が入れない空気が漂う。 しかも、3歳の娘も一緒だから、行けるところは限られる。 行き当たりばったりでは難しいし、子供は如何?という交渉も煩わしい。 仕入れや買い物のついでに立ち寄る、気のおけない店が有り難い。
● ● ● ● 京都の新名所 ● ● ● ●
新駅ビルが出来た当時、外食業界では、この中のテナントやフードコートが話題になった。 初めていく新名所、美味そうな気配で飛び込んだのは10階の「伊太利亜市場BAR」。ランチはメインを1皿選び、あとは前菜とデザートのキャフェテリア。 1800円は少々高めだが、お味はかなりいけている。しかし、「子供は3歳以上から800円」。これを除けば 親子連れでも、気兼ねなくライト・イタリアンが楽しめる。
仕事で奈良に行く女将と別れ、咲良と二人、河原町で「ターザン」を見る。 今回の宿は、三条烏丸ホテル。サービスも客室も、料金と照らせばリーズナブル。その上、庭の見える大浴場が付いている。 部屋の冷蔵庫には何も入っていないのも有り難い。
● ● ● ● 花見小路の名店● ● ● ●
奈良から帰った女将と落ち合い、初日の夜は、「祇園 にしむら」の個室でゆっくり和食を堪能。 喧騒から少し離れた花見小路にポツンポツンとある名店の一つ。 東京は「吉兆」で修行をしたご主人のピンと張りつめた心意気を感じる料理の数々。 娘のために、山葵を抜いた「ごま豆腐」や、「デザート」も、用意してくれるサービスが嬉しい。 すっぽんのお碗、平目の造り、菜の花のごま和え、なまこ、 さば寿司、春山菜のてんぷら・・取り立てて驚く素材は何もないのに、手を抜かない、技巧に走らないことに、 この店の深淵な心を感じ取る。最後に挨拶に出たご主人の立ち居振舞いがその全てを語る。
● ● ● ● 清水を巡り、三条を歩く● ● ● ●
2日目は、宿の近くのスターバックスで朝食。清水に直行。 お目当ては、清水界隈の食器店の動向調査と茶碗坂のそぞろ歩き。 清水寺参拝以外は大きな収穫もなく、河原町に戻る。 器のギャラリー「にしかわ」で、寺川剛央氏の手になる、可憐で華奢なお猪口に出会い衝動買。
三条近くの「廣東料理はまむら」で昼食。 「炒什砕(ちょうちゃぶすい)」900円(たけのこのたっぷり入った肉とえびの野菜炒め) 「揚州炒麺(よんちょうちょうめん)」850円(とても香ばしいあんかけ揚げそば) 「廣東麺(かんとんめん)」850円(具がたっぷりで、あっさりして深い味のスープが抜群の湯麺) 頼んだものが、どれもこれも美味い.。ビールをやっとの思いで我慢した。 小さい子供がいるからと、時代を感じる2階の座敷に通してくれるところも嬉しい。
新京極から三条へ、明治のモダニズム溢れるレンガ造りや、昔ながらの町屋の風情が味わえる。 女将がインターネットで知り合ったハンナさんの「のきさきや あず-ろ」もその一つ。 厚かましくも上がり込み、庭やらお風呂やらを見学。話に花が咲く女将を残し、娘と共に、六角堂へ。 ここの鳩は人間を恐れぬ。豆をやると、頭でも肩でも手の上でもとまる。ヒッチコック状態に凍りつく娘。 夕食は、昼間、三条で目をつけておいた「あるとれたんと」へ繰り出し、牛肉のカルパッチョなど適当なつまみで赤ワインを空ける。 子供がいても負い目を感じない、バールという雰囲気の店。パンが滅法うまいが、ワインは高い。 そぞろ歩きを楽しみながらもう一軒。「セカンドハウス」でデザートを食べる。京都らしい佇まいと軽いケーキを楽しんだ。
● ● ● ●錦市場と弘法さん ● ● ● ●
最終日、娘とゆっくり朝寝坊。目覚める頃に、一仕事終えた女将が帰った来た。チェックアウトし錦小路へ直行。並べ立ての商品を買い込む。 千波(ちなみ)の「木の芽煮」「昆布とかつお梅の佃煮」「ちりめん山椒」「葉山葵」 お新香は打田漬物で、「おんぶ漬(大根に昆布とかつおのうま味が染みたやつ)」「きゅうり、なす、しょうがのしば漬」「たけのこ漬」「赤かぶら漬」などなど。 それでも足りずに、豆英のおかきや、おばんざい屋さんで「えび豆」「若鮎の甘露煮」などをぶらぶらと求める。 遅い朝食は高島屋。京都はホテル以外は朝食が不便だが、遅めなら、高島屋の地下は良い。 10時の開店に、地下のイートイン・プラザは全てスタンバイ。 安くてうまく、暖かい朝食にありつける。「うどんの みなみ」の昆布うどんで暖をとる。
一路、弘法さん(東寺)へ。女将は既に、この日の早朝、ここで仕入と商談を終えているので、 するめのあぶった奴(ゲソだけ)を200円で買い、しゃぶりながらゆっくり市を巡る。 「煎り銀杏」「うるめ干焼」「干し葡萄売り」、初めて見る屋台のオンパレード。 今のものだが、蛸唐草の杯洗を1個買い込む。 タクシーで引き返し、「のぞみ」までの最後の時間を使って買出しは続く。村山造酢の「千鳥酢」、八百三の「柚子味噌」、西友の「しじみ茶漬け」ああ、本当に満足、満足。
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旦那の居場所、今回は「旅にしあれば旅の味」京都のおいしさについてでした。 この旅で、本当にうまいと感じたものは、決して高級な素材ではありませんでした。 厳しい冬の寒さに耐え、自らの滋味を養った素材。 そして、「その素材はこうして食べるのがおいしい」という永年の経験が、信念にも近い完成度を帯びている。 本物の豊かさとは何かという問いへの一つの答えが用意されている町。 「あと15分あるから、ちょっと買い物ができる。」駅についても、伊勢丹の地下へ直行。 穴子のにぎり、さば寿司、冷酒を抱え新幹線に乗り込んだ。 「夕食はおいしいご飯を炊いて、買い込んだお新香と佃煮の数々で・・。」「のぞみ」の中でも食べ物の話が尽きぬ。 ホント京都の魅力とは、不思議なものです。
オープンビューレストラン「伊太利亜市場バール」 JR京都伊勢丹 10階 075-352-1111(代)
祇園にしむら 東山区祇園町南側570-160 075-525-2727
廣東料理 はなむら 河原町三条下ル 075-221-4072
あるとれたんと 中京区堺町三条上ル東側 075-253-3339
京こんぶ 千波 中京区錦小路通柳馬場西入 075-241-3935
打田漬物錦小路店 中京区錦小路通柳馬場西入 075-221-5609
豆英 中京区高倉通四条上ル 075-221-0982
村山造酢 東山区三条大橋東3-2 075-761-3151
元祖柚味噌 八百三 中京区姉小路通東洞院西入 075-221-0318
「のきさきや あず-ろ」中京区堺町三条下る 075-241-0763(原則土日曜のみ営業)