旦那の居場所第2回 浅蜊(アサリ)礼賛
女将のダンナは「惣菜管理士」というあまり知られていない資格を持っている、 ただのサラリーマン。とにかく大の料理好き!・・で、このお店を間借りさせて あげることにしました。 名づけて「ダンナの居場所・・居酒屋のおやじを夢見て」。 これからも色々な素材を取り上げていきますのでお立ち寄りください。*この記事は1998~2005年に書かれています
瀬戸内は岡山県児島の磯辺から、唐琴丸(カラコトマル)という小船に乗って漕ぎ出すと、干潮時にのみ顔を出す 絶好の潮干狩りスポットがある。沖合いにできた幻の砂辺を唐琴丸は定期的に往復しお客さんや、ビールや焼きそば などの出前を乗せてやってくる。 潮が満ちて、この砂の小島が瀬戸の海に飲み込まれるまでのドキドキ、ワクワクの潮干狩り。
◆金沢の料理屋で
女将の九谷焼出張のお供で金沢に行った。旦那の楽しみは地酒と肴。料理屋「音羽屋」の「あさりの酒蒸し」はうまかった。 大根にもたっぷりと上品なうまみがしみ込んだ絶品。しかも、見たこともない大きなあさり、殻の長さが8cm もあろうか。さすが、荒海の日本海では、アサリはこんなにもたくましくなるのか・・
女将(注):彼は絶品だ!と店のご亭主と意気投合しながらカウンタ-で深い眠りに・・・
しかし、見慣れたアサリとは、いささか大きさが違いすぎる。調べた結果、アサリとは別種の内紫(ウチムラサキ)貝か 小玉(コタマ)貝ではないか思われた。2種とも北海道から九州にかけて広く分布し、地方によっては、オオアサリ、 アサリと呼ばれる。大きいからといって決して「おおあじ」ではない、オオアサリに感激。
◆アサリのおいしさの秘密
アサリのうまさは、あの独特のコクとうまみだ。舌の根元の両側を刺激するパワー。詳しくはないが、 コハク酸、グルタミン酸、グリシンあたりのうまみなのだろう。そして、疲れた肝臓を癒して くれるような複雑な風味と、個性的な食感だ。 「あさり~、しじみ」幼い頃はしじみ売りが・・、と書きたいところだが、流石にそういう記憶はない。
魚屋さんの店先で水につかって、時々ピューと潮を吹く。それがアサリだった。 今ではパックに入ってスーパーの冷陳ケースに整然と並ぶ。 でも、幼い頃には知らなかった一番好きなアサリの食し方を楽しんでいる。 二日酔いの朝のアサリの味噌汁。これに勝るアサリ料理はない。
★★★ホントにおいしい・・「アサリ」のあの料理★★★
小さい時から大好きだったアサリ料理がある。アサリの持つうまみ、甘みが大根にしみ込んで。 名前などないのだが、 「アサリと大根の炒め煮」 というのだろうか。
●●●「アサリと大根の炒め煮」●●●
大根は、長さ5cm、幅2cmの短冊切り。これを油でさっと炒め、 水、酒、アサリを入れて煮込む。味付けは、塩、胡椒で。 アサリのおいしさのためには、醤油、砂糖などは入れないか、ごく少量に。 水、酒であらかじめ、アサリをさっと煮て、その煮汁で大根を煮れば、 アサリを煮過ぎないで済む。時間があればおすすめの方法。 コンソメベースの牛乳隠し味で洋風仕立て、豆板醤、オイスターソースで中華風でも良し。
どこで食べた「アサリそば」がうまかったのか思い出せないが、台湾料理店ではなかったか? 渋谷の台湾料理の名店、「麗郷(レイキョウ)」だったかなと思ったけど、確かあそこの名物はアサリでなくシジミだった気もする。 記憶を便りに、それでも家庭で15分でできる様にアレンジすると・・。
●●●「アサリそば」 ●●●
青菜(チンゲン菜、ほうれん草、レタスなど)に、長ねぎ、たけのこやにんじんの細切りなど 具はあるものでいい。これを炒めて、ガラスープ、あさりを入れて、塩味ベースの味付け。 中華麺と一緒に盛り付けて熱いうちに胃袋へ。あさりは殻付がいい。薬味はザーサイの微塵切り。 がらスープは鶏がら、貝柱などで澄んだ上湯(シャンタン)をとってもいいが、1日がかりになるので、 市販のガラスープの素で。あさりのうまみが出るのでこれで充分。味の素の「丸鶏使用がらスープ」がいいと思う。
2歳の娘はアサリが大好き。小さな前歯で貝から身をはずすことが楽しくてしょうがない様子。 なかでも「コンキリエのボンゴレ」は大好物。巻き貝の形をした ショートパスタと2枚貝のアサリの取り合わせが大のお気に入り。アサリ2個に対しコンキリエ1個を 口にほおばるのが、彼女のこだわりらしい。
女将(注):「こだわり」ではなく「執着」です
●●●「コンキリエのボンゴレ」●●●
長ねぎ、少量のにんにくを微塵切り。オリーブオイルで炒め香りがでたら、アサリを入れて、白ワインで蒸し煮。 たっぷりのお湯と1つまみの塩でコンキリエを茹で上げスープとからめてでき上がり。塩、胡椒は最後で可。 スパゲティーのかわりにコンキリエを使っただけの簡単ボンゴレ・ビアンコ。 ボンゴレに使うアサリは、殻付きか、むき身か、両方か、議論は果てぬが、我が家では娘のために、 殻付きのみにしている。 コンキリエ=貝殻の形のショートパスタ
旦那の居場所、今回は「アサリ」のおいしさについてでした。下町の味、懐かしの深川めしは割愛させて頂きましたが、ビタミンB2、カルシウム、鉄分に富み、日本全国でとれる アサリは、古来より庶民の強い味方。何よりいいダシがでますし・・。
旬は秋から春にかけてですが、春の季語。春のイメージが強い素材です。パック入り砂抜きあさりも、塩水につけて砂抜きが必要。また貝と貝をこすり合わせるように 表面を洗うことも忘れずに。意外と汚れているものです。しかし、自分でとったアサリはどんなに砂を噛んでいても、許せてしまうから不思議なものです。 (98年5月)